■オカマバーフランソワの続きです。
■アーサーがとことんksです。
■計画性なく書いているので、一話目と設定が変わっています。
■何か目的も変わりました。多分これからも変わります。
やっべえ……なんだあいつ、めっちゃ可愛い。可愛いっていうか、滅茶苦茶タイプ。
引き締まった尻に、でっかい肩、太い腕……身長も180は超えてるか?
体力ありそう……力も強そう。いいなあ。ていうか、ノンケかな。だろうな。でもそこがいい。
ノンケの男ほどウブで可愛い。造り変え甲斐があるっていうか……。
『や……やめてくれよ、俺、男なんて……』
『そんな事言って、ほら、身体は正直だな?素直になれよ……』
『やめてくれ、アーサー……!』
……………………やべえ。滅茶苦茶興奮してきた……あいつ、名前なんていうんだろう。
可愛いな……マジで可愛い。あの眼鏡とかストイックそうで本気で可愛い。ちょっとぽちゃっとしてる所もやわらかそうで可愛い。
オレの大好きな、金髪碧眼だし……こんな可愛い奴が近くに住んでるって、何で今まで何で気付かなかったんだろう。
決めた。
絶対落とす。
◆◆◆オカマバーフランソワへようこそ 〜ヒモ・アーサーの場合〜 ◆◆◆
「おいクソ髭ぇ!金寄越せ」
「きゃぁああっ!アーサー!着替え中に入ってこないで頂戴っ!」
「あ?今更てめーの気合いの入ってねーtnkなんて見ても興奮しねーよ」
「ひどい!気合い入れさせてくれないのはアーサーじゃない!」
「お互い様だろうが、クソッタレ」
はぁっと息を吐いて、まだ着替え途中のフランシスの部屋をずかずか歩く。
せめて扉は閉めて、と前を隠してドアを閉めるベビードール一枚のフランシスに、オレはうんざりともう一度息を吐いた。
「お前も、なんでそんな風になっちまったんだろうなぁ……」
「え?なあに、アーサー」
「オレは、前みてーなゲイ臭い匂いプンプンさせてる、変態チックな露出狂のお前が好きだったんだよ」
「えっ……そうなの?やっぱり、オカマなんて嫌なの?」
「まあどっちにしても、オレ他に好きな奴出来たから。出てくわ」
「えっ、えええ、ええええええ!!」
「つーわけでよ。手切れ金寄越せ」
「え、ええええ、ええええええ!??!!??」
えーえーうるせえよ。このオカマ。
身長はそんなに変わらないのにオレよりもがっちりむっちりしやがって……オカマのくせに毎日筋トレしてるのは、一体何の為なんだ。
しかもスケスケのベビードール一丁で。
本当にわからないとでも言う様に泣くフランシスに、オレは着ているパーカーを脱いで投げつけた。
オレの名前はアーサー・カークランド。
23歳の英国紳士だ。
大嫌いなパリの学校に通っている間に今一緒に暮らしてるこのワイン野郎……、
今は野郎って言うと「野郎じゃないわよ!」烈火の如くキレて面倒くさい事になるから言わないけど。
とにかく、この男だか女だかわかんねー奴と付き合うようになって、早……何年だ?
数えてない。まあ、年数なんてどうでもいい。
取り敢えず、今は立派なオカマになってしまっている、昔のこいつとの話を聞いて欲しい。
付き合う前のこいつはそれはもう、匂い立つ様ないい男だった。
柔らかいブロンドにくるりとカールした長い睫毛、いつも第三ボタンまで外したシャツから見えるふわふわの胸毛(触ればけっこうごわごわしてた)、
そこから続く結構毛深いギャランドゥ、ビキニラインから膝まで伸びるサディンドゥ……。
  ※サディンドゥ=毛深い腿毛。造語。
付き合って欲しいと言ってきたのはフランシスだ。
そう仕向けたのはオレだ。
計画通り。心の中で、オレは静かに笑っていた。
少し露出プレイが好きなこいつは、トレンチコートの中は大抵常に、裸だった。時々勃起した逞しいtnkに真っ赤な薔薇を巻き付けていた。
棘が刺さってなかなかいい刺激だと、青い瞳を蕩けさせて微笑んでいて……オレは、そんなこいつが大好きだった。
こいつの顔も作る表情も好きだった。どんな事をしたって、こいつはいつも笑ってた。
ちょっとサドッ気のあるオレは、こいつのtnkに綿棒を突っ込んで遊んだり、覚えたばかりの亀甲縛りをしたままコートを着せて、首輪をしたまま外を歩いたり……。
『一切人間の言葉を喋っちゃいけないゲーム」とかした時なんて、ホントに楽しかった。
いつの間にか、『あいつが豚でオレが飼い主〜ブタは黙って靴でも舐めてろ〜』っていう設定になっていたけど……
遊びで着たボンテージにヒールとか履いて、あいつの尻を蹴っ飛ばした時とか、新しい扉を開けそうなくらいに面白かった。
あいつがマゾかどうかなんて、そんな事は知らない。興味無い。
でも、あいつはいつもオレの事を怒ったりしなかった。
オレの我儘をいつも聞いてくれて、デートの時なんかは、オレが「つまらない」と口を尖らせればニコリと笑って、
自分のtkbに仕込んであった洗濯バサミを見せてくれたり、電車の中でハァハァしながら痴漢プレイをしてきてくれたり……。
ウケを狙いすぎて、腹芸を見せてくれたりした時もあった。
あの時はつまらなさすぎて、鉄板入りの靴で股間を思い切り蹴っ飛ばした。
それでもあいつは怒るどころか、「女になれそう」なんて泡を吹きながら、青い顔で笑っていて……。
あんないい男が、他に居るか?とにかく理想の恋人だったんだ。
オレの言う事を何でも聞いてくれて、金も持ってて、顔も身体も最高で。持ってるtnkもバズーカ並みで。
ああ、きっとこいつって、オレと出会う為に生れて来たんだ。
そう、本気で思える位に幸せだった。
だが、幸せは長くは続かない。
人生なんてそんなもんだ。
大抵、幸せの後には同じくらいの不幸が訪れる。
それはまるで、綺麗に反比例しているグラフの様に。
「ただいま、フランシ……」
「おかえり、アーサー」
「…………何かのプレイか?その下着……クソ似合わねーぞ」
「あのね……アーサー、俺……いえ、アタシ、話したい事が」
「なんだよ?あんまりワインくせー顔近づけんなよ。髭がうつる」
「女になりたいの」
「…………は?」
…………大好きだったゲイで変態で優しい男だった恋人が、突然不完全な女になったのだ。
オレの、オレの可愛い豚が。
うそだろ。女に?なんで?
どうでもいいけど、着ているベビードールが本気で蹴っ飛ばしたくなるくらいに似合わない。
プレイとしてスケスケのベビードールを着るならば歓迎だ。
だけど、違う。こいつは本気でそれを着こなしたいと思って、着ているのだ。
恥じらう乙女の様に、オレに、可愛いと思ってもらいたいとでも言う様に。
最初に伝えたが、オレは紳士だ。紳士は、レディには手を上げない。
蹴ったり殴ったり罵ったり、ましてや股間を踏みつけるなんて真似は、絶対にしない。
いいか。だからオレはゲイになったんだ。
女には絶対に手を上げるな、そう小さなころから教わってきたオレは、ならば男にならしても良いのかと、そう信じて。
自分の性的嗜好に問題があるのは自覚してる。女には絶対にこんな事出来ない。だから。なのに。
一番の理解者であると思っていたこいつが、女になりたいだなんて。
ガラガラと、世界が崩れていく様だった。
フランシスが、女になる。
オレの大好きなでっかいtnkがなくなって、きっとそのうちにでかいメロンみたいな胸をつけるんだろう。その、分厚い胸板に。
一見ふわふわに見える、ごわごわの胸毛だって剃ってしまうに違いない。
あれは、オレが一本一本、ぶちぶち抜くのが好きだったのに。
流石にオレだって、女を全裸で縛りあげて、その上にトレンチ一丁で買い物になんて行かせられない。
イヌとブタと罵って、ハイヒールで蹴っ飛ばす事も、女には出来ない。そんなの、男として最低だろう。
「お願い、アーサー!捨てないで、今までみたいに、一緒に暮らして」
「……無理だよ、お前、女になるんだろ?オレさ、ほら、ずっと女に免疫なかったから、ほら、アレルギーが……」
「アーサー、あなた……!」
「触んなよ……あと、お前、本気でその服気持ち悪いんだよ……」
「可哀想に……、あなた、本当にゲイなのね……ていうよりも、女が苦手なのね……」
女が苦手なんじゃない。未知の生き物すぎて、怖いんだ。
すぐに泣く、怒る、喚く、おかしな持論を持ちだしてヒステリックに責め立てる、更に弱い。オレより弱い。
どうやって接していいのか分からない。普通にしているだけなら何でも無いけど、こういう深い話になるとそれは別だ。
女に泣かれると、何もかもオレが悪い様な気持ちになる。
実際そうなのかもしれないけど、ごめんと謝っても、何で怒っているのか知らない癖にと更に怒られる。
完全に、オレというアイデンテティが失われるのだ。女と恋人になると。
だいたい、オレ、昔から女に勃たねーし。
……その、女に、フランシスが?
悪夢だ。
くらりとする頭と、ぶつぶつと湿疹の出て来る肌を押さえてよろめいたら、オカマになったフランシスが慌ててオレの身体を支えて言った。
「大丈夫よ、アーサー。アタシ、心は女でも、いえ、身体が女になっても、貴方の豚でいるから……」
「……本当か?でも、オレ、女とは……」
「まずはオカマから、免疫をつけて行きましょう。アーサー。それで、いつかきっと、本当のメス豚として罵って」
「……フランシス……!」
「アーサー!」
「悪いやっぱり無理だオカマなんて気色悪ぃ!!」
「生粋のゲイに言われたくないわよ!!」
さようなら。オレの初恋。
オレは、男らしくて逞しい、お前のtnkが大好きだった……。
「……っていうやりとりあったの、覚えてるか?」
「……あー……ったかしらね、そんな事……」
「忘れてんだろ。なぁ、忘れてんだろ?」
あれから、フランシスは変わってしまった。
以前みたいに少しでも酷い事を言えば「乙女にそんな事を言うなんて、ひどい!」と泣かれるし、もちろん夜の生活だっておかしなものだ。
「恥ずかしい」と言ってもじもじしたまま動かない。でっかいtnkにリボンまで巻いて。
オレはゲイの受け専だって言ってんだろ。オレに攻めろってか?出来る訳ねーだろ。
「やる気失せた」と起き上がって煙草を吸えば、「乙女にそんなことを言うなんて以下ry」。
うんざりだ。
「悪りーけど、やっぱりオレ、オカマより男のがいーから。じゃあな」
「待ってアーサー、待って!捨てないで!」
「離せよ。お前、女になるなら髭剃れよ。顔はいいんだからよ……」
「いや……いやよアーサー……!貴方のお嫁さんになりたくて、アタシ、オカマになったのに……!」
「世話になったな」
「あと今までのお金返して!」
「10年後に口座に振り込んどく」
「やっぱりお金いらないから捨てないでえええ!!」
…………っていうのが、ここ半年くらいのやりとりだ。
「出ていってよ」って半狂乱になって叫んだかと思えば、「愛してるから捨てないで」……一体どっちなんだ。オレだってどうしていいかわかんねーよ。
はっきり言って、オカマになったこいつに興味はゼロだ。ゼロっていうか、マイナスだ。
好きか嫌いかと聞かれれば、嫌いでは無い。無関心。その辺に転がってる石ころとか、セロハンテープみたいな感じ。
いてもいなくてもどっちでもいい。だから、ここに居て、と言われれば別にいい。
ただなー……抱いてと言われても。繰り返しになるけど、オレ、受け専だし。
女にも勃たねーっていうのに、オカマに勃つと思うか。ばか。
「お前が別れないでって言うから、こうしてオレはお前と居てやってんだろ?ああ?手切れ金くらい寄越せよ」
「……ほんとに、ほんとアンタ、酷い男よ。100人に聞いたって、100人がヒドイっていうくらい駄目な男よ……」
「その駄目な男と別れたくねーって駄々を捏ねてたのはてめーだろ。別れてやるっつってんだから、潔く見送れよ」
「酷い……っ!」
「あと、金」
「絶対地獄に落ちるわよ!アンタ、絶対に落ちるから!」
「お前だって、折角オレが好きな奴が出来たんだから、ちょっとは笑って応援しろよ!ばかあ!」
「何で馬鹿って言われなきゃならないのよ!頭おかしいんじゃないの!!」
キーッ!とフランシスが泣きながらそこら中の物を投げつけて来る。
ピンクのクッション、アロマキャンドル、レースのナイティ、……おい、何だよこの生理用品!変態!
元男前の恋人は、女性ホルモンの投与のしすぎでおかしくなってしまったんじゃないかと時々思う。
実際は、元々変な奴だったのかもしれない。
やけに股間部分に余裕のある、オカマ専用のレースの下着を顔にぴたんっ!とぶつけられて、とうとう、紳士なオレもぶちきれた。
「あーーーーッ!もういい加減にしろよこのオカマ!髭!脛毛!胸毛!陰毛!オレだってもう欲求不満で溜まってんだよ!
 いいか、オレはあいつと一緒にラブラブハッピーゲイライフを送るからな!」
「毛の事は言わないで!陰毛関係ないじゃない!ばっかじゃないの、アンタにストレートの男なんて落とせるもんですか!」
「はっ。オレが落とせねー男が、この世に居る訳ねぇだろ」
「冗談も休み休み言いなさいよ、この眉毛。相手もゲイならいざ知らず」
「……言ったなオカマ野郎。いいぜ、賭けるか?」
レースの下着を投げ返しながら、オレは笑って、ずいっとフランシスの顔を覗き込んだ。
青い瞳を縁取る金色の睫毛、少し生えてきた不精髭…………こいつ、ほんっっとに顔はすげえタイプなんだけどなぁ……勿体ねえ。
何でわざわざオカマになんて。
眉を寄せてまじまじと見ていたら、フランシスは少し黙った後に柔らかいブロンドをかきあげて、ふっと鼻で笑った。
「面白い……やってみなさいよ。アンタがその子を落とせたら、潔く男に戻ってやるわ」
「……言ったな?聞いたぞ!ついでに男に戻ったついでに、あいつとオレと3Pしろ」
「は……はっ!?じょ、冗談じゃないわよ!アンタを取られた挙句に男に戻って他の男と3P!?嫌よ!!」
「もしオレがあいつを落とせなかったら、一切酒もギャンブルも止めて、パリでお前と結婚してやる」
「えっ……」
「どうだ?」
「う……うう……っ、い、いいじゃない、やってやろうじゃない!どうせ落とせっこないでしょうしね」
「決まったな。お前、男の時に着てた服捨てんなよ。一カ月以内にあの男、オレにメロメロにしてやる」
「アンタこそ、アタシへのプロポーズの言葉考えておきなさいよ。指輪はピアジェ以外受け取らないから」
「てめーなんてコカコーラのプルリングで十分だ」
「今ああいうタイプの缶無いじゃない!」
「どっちにしろやらねーけどよ!」
tnk洗って待ってろ、そう言ってから、俺は笑いながらフランシスの部屋に踵を返して、扉を閉めた。
「アタシのへそくりがない!!」と叫ぶオカマの声は、もうオレには聞こえない。
バーへ続く階段を下りて、まだ開店前のカウンターから年代物のマッカランを持って外に出る。
ああ、何ていい天気だ。常日頃、「雨男」だの「お前が来るといつも曇る」だの言われているオレには不似合いなほど、いい天気。
きっと神様も味方してくれているんだろう。
あの可愛いヒップの男……アルフレッドと、オレの恋を。
アルフレッド・F・ジョーンズ。
名前は、尾行してたどり着いた家の郵便受けで知った。
ちょいと郵便物を拝借して、一人暮らしだって言う事も確認済みだ。
あん?犯罪?バッカ、恋する男のいじらしい悪戯みたいなもんだろうが。
オレは持ってきたマッカランのボトルキャップをきゅぽんと抜いて、一口飲んでからにたりとする。
「今行くぜ……ハニー。すぐにオレの魅力とケツで、足腰たたねー程に愛してやる」
まだ明るい太陽の出ている青い青い空の下、オレは上機嫌でアルフレッドの顔と身体を思い描いて、笑った。