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■緩ーくスカ系 |
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ルートヴィヒ。 |
オレの親戚で、息子で、弟で、相棒で、恋人。・・・恋人?うん、まぁ、恋しい人ではある。いや、愛しい人と書いて愛人の方が正しいだろうか。 |
愛人・・・
liebhaber?違うか?まぁいい、とりあえずアレだ。一緒のベッドで寝る仲ではある。 |
兄貴分であるオレの背をいつのまにかとうの昔に追い越して、体もがっちりむきむきになりやがり、 |
声も顔も非常にセクシーにすくすく育ち、やけにディベートの強いこのドイツ人は、さりげなく自慢の弟だ。 |
なので、多少癪ではあるが、ベッドでは兄の広い懐をご披露して、大人しく女役を買って出てやっている。 |
兄の優しさと偉大さを知るがいい、弟よ。 |
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そんな懐の広いオレ様でも、いただけない事はそりゃぁ、ある。 |
小さな事から言えば、たまには男役と女役を変わって欲しいとか。 |
コンドームはかかさず付けて欲しいとか。腹下すし。 |
前戯が長いとか後戯がしつこいとか全体的に乱暴だとか、あと似合わない言葉責めめなんかは、切実に止めて欲しい。 |
まあ、べつに。この辺はまだ経験の浅さに免じてこれから直してくれればいいし、こっちもその度に言えばいい。 |
セックスの相性なんてのは、もともとの良し悪しでなく、お互いに協力してレベルを上げて行けば問題ないのだ。 |
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ただなぁ。これだけはどうなんだろう。 |
生まれついて持ってきた性癖とでもいうのか、こういうものは治るんだろうか。改善の兆しが見られない。 |
何回言っても、どんなに怒っても怒鳴っても泣いても叫んでも暴れても、治らない。むしろこんな事をした日には更にエスカレートする。 |
最終的にはしょぼんとして俯いて反省して、すまないと謝るのだから可愛いものなんだけど。 |
否、訂正、可愛くない。最中の奴は、決して、決して、可愛くない。 |
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コレ・・・そろそろ、ドメスティック・バイオレンスってやつになるんじゃないだろうか。 |
なぁ、ルツよ。お兄様は体が痛いよ。 |
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関節についた縄の跡と、ひっぱたかれて赤くなった肌と、全身につけられた噛み跡を鏡に映して、 |
オレは重い重い溜息を静かについた。 |
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※ |
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さすが、世界が認めるドS国。 |
自他共認めるサディストの象徴のような我が弟は、普段は冷静で温厚だが、セックスの時だけはひどくひどくサディスティックだ。 |
ぐるぐるとがんじがらめに縛り上げて、身動きの全く取れない中での強引なセックス。 |
野郎同士の繋がりには欠かせない筈のローションだのを使ってくれない時なんて数え切れなくて、 |
その度に出血する可哀想なオレの尻は、こいつと寝るようになってから平穏なトイレットと言うものをすっかり忘れてしまっている。 |
やめてくれと本気で泣いても、泣けば泣くほど酷くされるし、殴りかかってもむきむきの腕で倍の力で返される。 |
抵抗すればする程興奮するというこいつの性癖を知ったのは、ベッドを共にするようになってしばらく経ってからだった。 |
長い戦争体験のPTSDで血に興奮する奴ってのは聞いた事あるが、幼いころから慈しんできた弟に、ベッドでこうも乱暴に扱われるとは。 |
最初の頃こそ全身に残る縄の跡と青と赤の痣に呆然としたものだが、最近では結構慣れて来た。いや、もう、慣れる他ない、一種の防衛本能だ。 |
別に命を取られるってわけではない、ひっぱたかれる事も足で性器を踏まれる事も興奮の余り力任せに首をきゅぅぅっと絞められる事も、 |
プレイの一貫と言えば楽しめる行為では、なくは、ない。実際そういう事で興奮するカップルだって星の数ほど、居るには居る。 |
二人の間で問題なのは、オレがMではないという事。 |
どちらかと言えば、こいつと同じ血が通っているという事を考えれば。Sな筈だ。少なくともMではない。 |
ただ、オレは嫌がって泣いて暴れて恐怖で奥歯かちかち言わせるルツをどうかしたいとは思わないし。 |
オレがSなら、あいつはドS。弱肉強食、強い者が勝者という法則で見れば、確かにこの関係は間違っていない。 |
間違っていないが、問題は解決されないのだ。 |
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オレがMではない限り。この関係は、しんどい。非常に。 |
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※ |
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「・・・念の為聞くがな、ルツ。その、綿棒はなんだ」 |
「試してみたくて」 |
「何をだ!答えろ、いーや、やめとく。聞きたくねぇ」 |
「尿道を」 |
「全力で断る!!!」 |
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今日も今日とてドSな我が弟は、好奇心旺盛の果敢なるチャレンジャー、実験道具は哀れなオレ様。 |
しゅるしゅると体に巻きつく黒い紐。今日は麻縄じゃないだけいい。あれは擦れて大変痛い。 |
拘縛プレイ程度にはすっかりなれてしまった自分の体にこっそり涙して、大人しくされるがままに足を開く。 |
膝の裏から紐を巻きつけられて、開いた状態で肘と固定される。 |
ころんと転がるオレを見て嬉しそうに笑うルツに、ばかじゃねぇの、ドS、アブノーマル、変態、と文句を垂れたらぎゅぅぅぅと紐を搾られた。 |
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「なぁ、何で縛るんだよ。別に暴れたりしねーって・・・」 |
「趣味だ」 |
「じゃあ、お前も今度メイドさんのカッコとかでしてくれよ・・・」 |
「・・・・・・・・・・お望みであれば、しても良いが・・・」 |
「やっぱいいわ、悪ぃ」 |
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どたばた暴れるセックスの為に買った、キングサイズのベッドの上で、素っ裸に縛られたオレと、スーツのジャケットを脱いだだけのルツ。 |
会議後の奴を出迎えてお帰りのキスをして、抱えられて、ベッドに放られて、ぉおお?と思ってる間に、お気に入りのエプロンを剥かれて。 |
こんな会話をしながら笑った後にルツが取り出した真っ白のぷわぷわ綿棒を見て、ぴしりと体が固まった。 |
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「イヤだ!!ふざけんじゃねぇ、何があろうと言われようと答えはNeinだ!!! |
何度も言うが、オレはマゾじゃねぇんだ、んなもん尿道に突っ込まれて感じるとでも、」 |
「兄さん」 |
「熱っぽい目でオレを見るんじゃねぇぇぇぇぇえええええぇぇえ!!」 |
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じたばた足を動かしてもがこうとするも、両膝は腕と繋がってる。 |
そのまま両手は、体の前に。う、動けん。いや、わかっちゃいるんだけど。 |
こうして暴れる事自体こいつを刺激するとは分かっているが、これが抵抗せずにおられるか。 |
こいつと寝るようになってから、オレのセックスに対するアイデンティティはほぼ全て覆されたと言ってもいい。 |
おざなりだけどキスから始まって、適当に触って、突っ込んで、終わって、シャワー。 |
別に適当に女と寝ていた訳じゃない、でも大抵こんなもんだろう、他の奴らだって。 |
もちろん、ルツだって。そりゃぁ、男同士ではあるけれど、セオリーは同じ筈だろう、そう思っていたんだが。 |
いや、どうなんだ、違うのか?自慢じゃないが、男と寝るなんてこいつが初めてだし、恐らく最後。 |
こいつの舌がオレの体に触れてない所なんてどこにもないし、それこそ目だの腔内だの粘膜までも。 |
今弄ろうとしてる先っぽだって、例外じゃない。いつも舌をぐりぐり突っ込んできて、痛いと泣いても嬉しがる。 |
体位に関しても色々知らないことまで教えてもらってしまった。改めて、童貞の妄想力と若い体力ってのは恐ろしい。 |
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ただ、ただ、これは、あまりにも上級者向けすぎる。なぁ、そうだろう。そうだと言ってくれ。 |
教鞭と蝋燭なんてとっくのとうに乗り越えたオレだが、流石にこれはキツイ。しんどい。 |
愛する弟の為とは言え。言うに事欠いて、尿道。尿道!!一体このプレイを最初にした奴は誰なんだ。 |
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二度言おう。これが抵抗せずにおられるか!! |
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「頼む、暴れないでくれ。酷くしたくない」 |
「突っ込まないって選択肢はねぇのかよ!」 |
「ない」 |
「だよなぁ、わかってんだよこん畜生!」 |
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じりじりと、スラックスにテントを張りながら迫ってくる弟。右手には2本の綿棒。ぷわぷわしてる。 |
せっかくの男前の顔も、こんな絵ヅラじゃ台無しだ。 |
はぁはぁ言いながら素っ裸で縛られてる男に綿棒持って迫ってるなんて、こんなのオレしか知らないだろう。 |
当事者で被害者の、このオレしかな!畜生、楽しすぎるぜ!! |
にじにじと逃げるトコまで逃げて、ベッドサイドにごんと頭をぶつけた所で、がっしと体を押さえつけられて、ゲームセット。 |
ああ、頼むから再起不能にはしないでくれ。この歳でインポテンツだなんて悲しすぎるからよ・・・。 |
薄い唇の、キスの雨を顔中で受けながら、オレは覚悟を決めて目を閉じた。 |
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「・・・・・・・・・・ッッィぃい!!!!」 |
「・・・・・・駄目だ、萎えさせないでくれ、兄さん。入らない」 |
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はぁ、はぁっ、はっ、はっ、はっ、はぁ、ぜい。 |
自分の呼吸音がうるさい、まさか、ここまでの痛みとは。 |
萎えさせるな、そう言って俺のかわいそうな息子を握るルツに、ぎぃっと赤い瞳で睨みつける。 |
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む、む、む、無茶言うな、このやろう!!!!! |
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激痛、大事な大事なオレの息子様から、信じられないほどの大激痛。 |
長い間の軟禁生活、プラス帰ってきてからの愛ある拷問のおかげで痛みには大分抗体が出来たと思ってたオレが。とんだ自惚れだ。まだまだだ。 |
痛みっていうのは、医学的にはレベルが分類されるらしい。簡単に分類すると1から10まで。 |
そんなの、自分以外の奴が一体どうやって決めやがるんだと思いながら、激痛にきんきんする頭の隅で、これは間違いなく10を超えるとオレは思う。 |
予想外、激しくおかしく、予想外!だいたい、ココはセックスに使う場所じゃない、出すところであって、入れる所じゃ、間違いなく、無い!! |
つぷり、入れられた綿の先。ぐぅっと広がる尿道、そのままゆっくり押し入る細い綿棒。 |
ッヒ!肺が勝手に酸素を吸い、身体をのけ反らせ、がちがちがちがち、奥歯が鳴った。 |
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「い、ッ痛、ァ!痛い、痛ぇ、痛ぇ!!」 |
「・・・勃たせないと入らないだろう」 |
「クッソ、バカ・・・!無理だって、言ってッ」 |
「もう少し押し込むぞ」 |
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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!! |
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訂正、痛みのレベルは、間違いなく100! |
目を大きく開けて、硬直した全身はびくんと弓なりに仰け反る。声は出ない、出ない、ばかみたいに、口はぱくぱくと開くだけ。 |
痛くて、痛くて、生理的に滲む涙が両頬を伝う。一瞬目の前に星が飛んで、激痛の余り体が硬直した。久々に、こんな激痛味わった。 |
頼む、無理だ、ギブアップ。ルツ。 |
涙の滲んだ瞳を開ければ、ルツの野郎が楽しそうに綿棒の先を凝視している。 |
見たくなかったがちらと視線を下ろしたら、オレの可愛い可愛いお子様に、綿棒の先っちょがつぷりっと食い込んでいた。 |
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う、あーーーーーーーーーーークッソ、まじ、無理、無理!!! |
ぎちぎちに縛られて大股開きの脚、中心におっ勃つ性器には、用途の違う、医療用の綿棒。 |
あんまりに倒錯的なおかしな光景、予想を遥かに上回る激痛、奥歯をがちがち言わせながら、オレはひっくり返った声で懇願する。 |
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「痛ァ・・・、痛ぇ、よ、痛ぇ、バカルツ、さっさと抜け・・・!」 |
「・・・まだ先だけだろう、何を言ってる」 |
「抜けっていってんだよ、クソバカ!!」 |
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涙にしゃくりあげながら怒鳴ったと同時に綿棒を更に奥に押し込まれて、ヒッと体が仰け反った。 |
異物が、尿道を通過してるのがわかる。異物感が、抵抗力がすごい。ずくずく、何よりも半端ない痛みが。 |
痛い、痛い、痛い!!軽く上下に動かされて、勝手に身体はびくびく跳ねる。上がってくる涙、涙線崩壊。 |
畜生、畜生、何なんだ、何だってこんな事に! |
余りに痛くて、痛くて、痛くて、吐き気がしてきた。ぐらぐら回る視界、奥歯がかちかち、歯の根が合わない。 |
消えそうな声で止めてくれ、と哀願したら、ルツは愛してると言ってオレの足にキスをした。 |
そのまま、先っぽに突き刺さってる綿棒を避けて、じゅるっと音を出して、性器の根本に舌を這わせる。 |
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「・・・っぅあ、あ、やだ、止めろ、やめろ、ルツッ!あ、痛、ッァ!!」 |
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ずる、ずる、根本に舌を絡めて、目を合わせた状態で、方手で萎えてるオレのを、扱く。 |
青い瞳、普段は何を考えてるのかわからない冷たい瞳は、興奮すると瞳孔が開いて、色味が少し深くなる。 |
ひ、あ、痛ァ、縛り付けられてる足は閉じる事が敵わず、無理やりに勃起させられてる事実に目の前がちかちか、星が散る。 |
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辛い、辛い、痛くて、辛い。勃つとますます痛みが強くなって、それでも大きく育つ自分が嫌になる。 |
大きく股広げて大事なとこに綿棒立てて、挙句に弟に根本からしゃぶられて。 |
痛みと気持ちいいのがないまぜになって、一体オレって何してんだろうと回らない頭で息を吐く。熱い、息。はぁはぁ、声は止まらない。 |
舌だけで追い上げてくるルツは見てても大分いやらしくて、アイスブルーの瞳と目を合わせながら、涙で見えない弟の名前を、必死で呼ぶ。 |
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「・・・勃ってきた、兄さん」 |
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ルツは、嬉しそうに綿棒の刺さっているオレのを扱きながらうっとり言う。 |
んなこと口に出して言うんじゃねぇよ、ばか。サド。 |
おっ勃ってる自分のなんて別に見慣れてるもんだけど、流石に異物が突き刺さってる自分のものってのは |
見ていて何だか最高にシュールだ。ついでに、それを音を立てて舐め上げるバカな弟も。 |
しっかりと誇張したオレに安心したのか、それともようやく準備が整ったと気を良くしたのか。 |
まだがちがちと奥歯を鳴らすオレの上唇を舐めると、ルツは怖いくらいの笑顔を見せた。 |
怖い。何故それを怖いかと思うかって、こんな顔をした時の奴は、それはそれは酷い事をするからだ。 |
びくっと体を縮めるオレの予想を裏切る事無く、ルツは先っぽだけ刺さっていた綿棒をぐぅっと一気に、突っ込んだ。 |
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目が眩む。星が散る、全身神経がそこに集中して、白目を剥くかと思った。 |
痛いなんてもんじゃない、激痛とか、プレイとか、そんな言葉なんてのじゃ表せない。拷問だ。これは一種の、拷問だ! |
全身をびぃんと引き攣らせて、オレは高く高く、絶叫した。 |
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「ッい、ッ、ヒあ、ァああぁぁぁあああぁぁぁあああ!!ッあ、痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い!!ルツ!!」 |
「・・・ああ、兄さん。可愛い、貴方は、本当に」 |
「痛い、ッいやだ、いたぁ、ヤダ、やだ!イヤだぁぁあああぁぁぁぁああぁ!!」 |
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身動きの取れない体を捩って、死ぬ気で捩って、暴れる。痛ぇ、痛い痛い痛い痛い、マジで!!死ぬ!!! |
容赦なく上下に動かされる綿棒に、体ががくがくと戦慄する。怖い、痛い、壊れる。 |
下がどうなってるかなんて見る勇気がなくて、涙がぼろぼろ出る瞳をせめてぎゅうぅぅぅと閉じて、唯一自由になる頭を振ったら、 |
でかい右手に髪の毛を掴まれて、無理やり上を向かせられた。 |
ぬるぬるしたべろに顔を舐められて、瞳をこじ開けられて、痙攣する瞼を開ければ、かちりと合うのは興奮して目元を赤くした実の弟。 |
力づくで固定される顎、合わせられる青い瞳、少し潤んだ、海の色。ルツ、ぞわっと背筋を凍らせて名前を呼んだら、噛みつくように口づけられる。 |
唇を合わせながら、目は瞑らずに、ぱさぱさ揺れる金色の睫毛を朦朧とした目で見る。 |
ああ、この顔、この力、最高に興奮してる時の、こいつの顔だ。突っ込んで、がすがすがすがす、容赦無く腰を振ってるときの、こいつの顔。 |
なに人のチンコに綿棒おっ勃ててそこまでドキワクしてんだよ、この変態。 |
がちがちと奥歯を鳴らしながら、短い息をつきながら鼻を鳴らしたら、奴はぷは、と唇を離して下半身を見て、笑った。 |
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「すごいぞ、溢れてる」 |
「ひ、ぃあ、痛って、痛ぁ、あ、ァ、ア!!っやめ、ルツ・・・!イヤだ・・・ッ!」 |
「見てくれ、貴方も。兄さん」 |
「いやだぁ!!」 |
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力ずくで目をこじ開けられ、髪の毛を引っ掴まれ、下半身を見たら、もう何がなんだかすごい事になってる。 |
人生、何世紀この身体でいるかどうかなんて数えちゃいないが、初めて見る自分の身体にぞわっと全身が総毛立った。 |
ちゅぷちゅぷ聞こえるのは、下半身。さっきから、水音が立ってるから何だとは思ってたんだ。 |
ローションだかワセリンだか軟膏だか、てっきりこいつが何かの準備をしているだけだと思っていたのに。 |
萎える事無く、立ちあがった自分の性器。先から突っ込まれてるのは、白い綿棒。とろとろ溢れるのは、粘っこい、透明な、粘液。 |
あんまりにも倒錯的な、アブノーマルな自分の性器は、弟が小さく綿棒を上下させる度に、はしたなくもその液体を泡立たせていた。 |
ひぁ、見たくもない光景に、自然に喉が鳴って顔を反らす。耳元で、心底嬉しそうに笑うルツの声が聞こえた。 |
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「俺を変態扱いするには、随分じゃないか。兄さん、貴方も」 |
「ちっ、違、ちが、違う!違う!!」 |
「だったら、これは?」 |
「ッ痛、あ、あっ、あっ、あ、痛ァ、・・・・・・・・・・・・・・−−−−−−−−−−ッッ!!」 |
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違う、違う、オレはマゾなんかじゃねぇ、断じて!断じて!お前がドSなだけだ、痛いので感じるなんて、そんな変態的な事。 |
はぁっ、あぁっぅ、うー、うぅ、やだ、嫌だ、いやだ! |
ぜいぜい、自分の呼吸音と声で、頭の中が弾けそうだ。畜生、畜生。 |
そうしている間にも尿道への刺激は止まることなく、下半身から漏れる水音は大きくなり、激痛の中で頭が白くちかちか、星が散る。 |
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「っぅ、う、あ、いやだ、いやだ、いやだ、やだ、ルツ、ルツ、ルツ!!」 |
「どうして、兄さん。最高だ」 |
「・・・・・・ッア、あ!あ!あ・・・ッ!!」 |
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ぬぅ、恐らく、右手の中指、弟は耳元でオレの名前を呼ぶと、一本後ろに当てて、ゆっくりゆっくり、捻じ入れる。 |
体が跳ねる。場所を知っているかのように前立腺を引っ掻いて、掻き回す。痛い、痛い、痛い、これ以上、勃ったら痛い、助けてくれ。 |
はぁ、涙はぼろぼろ、止まらずに。別に気持ちがいいわけじゃない、痛くて勝手に出る、生理的な涙だ。 |
拘束されてる身体は悲鳴を上げ、後ろから擦り上げられるのは、尿道に続く前立腺。容赦なく突き上げられる、射精管。 |
前と後ろ、ついでに、先っぽ。突っ込まれてる、細い綿棒。同時に全部動かされて、がくがく身体が大きく揺れて。 |
ぎしぎし縛られてる紐を言わせながら「もう止めてくれ」と声にならない声で叫んだら、弟は優しい声で「止めない」と笑った。 |
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びく、びくん!身体が跳ねる、勝手に、高い声は喉から意志無く長く延びる。 |
こんなに酷い事をしている癖に、酷くすればする程声は優しくなるなんて、本当に詐欺だ。 |
女を抱いた事なんて、ないくせに。年下のくせに。オレの息子で、弟のくせに! |
痛くてでもそれだけじゃない感覚が怖くて悔しくて、少し高い位置にある首筋にがぶりと噛み付いたら、小さく声を上げて笑うこいつの声が聞こえた。 |
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「っは、あ、あ、あっ、やば、ァ、ルツ、ルツ、抜け、やばい、抜け、外せ!」 |
「いいから、兄さん」 |
「ヒ、っあ!!、ち、違ぇ、やばい、やばい、ッやばいって、外せ!ルツ!!」 |
「わかってるから」 |
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くすくす、笑う、ルツ。ちゅぷちゅぷ、先に突っ込まれてる綿棒は、止まらずに。 |
がくがく、がくがく、止まらない痙攣、わかってねぇ、おい、ちょっと!言葉は声として出ない、悲鳴はそのまま言葉にならない。 |
やばい、ちょっと、このままじゃ、おい、おい!かんかんと頭の中が警笛を鳴らして、目元にじわじわ涙が溜まる。脂汗が、止まらない。 |
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がちがち鳴る奥歯、体が揺れる。もう突っ込まれてどのくらいたったのか分からないが、この感覚は。 |
後ろに突っ込まれてる指は前立腺をごりごり引っ掻いてるし、尿道のピストンは止まらないし。 |
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ルツ、やばい、やばいんだって。止めてくれ、ルツ。ルツ。頼むから。 |
前立腺と射精管は、繋がってる。出てくる所は、同じ尿道。きゅぅぅうぅと絞られる膀胱、ぶるぶる、下半身が震える。 |
奥の歯の根は止まらない、がちがち、イヤだ、ルツ、こんな、おい、ちょっと、冗談じゃない。 |
下半身の奥から突き上げられる射精感と、同じく容赦なく襲う猛烈な尿意、顔面を蒼白にさせながら、弟に助けてくれと懇願する。 |
懇願した所で答えは同じだ。わかってる、そんなこと、わかってるのに。 |
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ぶるぶる、震える背筋、内股。声にならない声で「漏れる」と泣いたら、ルツは嬉しそうに微笑んで、綿棒をゆっくりと引き抜いた。 |
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「大丈夫。俺は兄さんのものなら、何だって愛してやれる」 |
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耳に注がれた低い声と、ゆっくり引き抜かれた綿棒。 |
栓をされていた出口をゆっくり開かれて、オレは目を見開いて、引き攣った声を上げて失禁した。 |
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「・・・・・・・・・・・まだ、怒っているのか、兄さん」 |
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 |
「ギルベルト」 |
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 |
「・・・・・・兄さん・・・・・・・・・・・・」 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・。 |
不機嫌に、そのうちだんだん、申し訳なさそうに。最後は、悪戯をして叱られた、犬のように。 |
しょんぼりと耳と尻尾を項垂れさせてオレの名前を呼ぶ弟に、今回こそはとそっぽを向いて、オレはつーんとだんまりを決め込む。 |
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怒っていない訳がない。 |
あの後は結局第3ラウンドまで付き合わされて、こいつのを突っ込まれたまま、また尿道にも変なもの付き立てられて。 |
もう出ないとしゃがれた声で泣いたら、煽ってるのかとさらにがっつかれた。 |
・・・・で、今のこの状況はなんだ。視界が黄色い。外にはちゅんちゅんちちちという、何とも爽やかな朝の訪れ。 |
ようやく解かれた体はまだ痺れが取れないし、なによりもべちゃべちゃな布団がたまらなく気持ちが悪い。 |
せめてシーツだけでも変えようと思ったら、マットレスまで染み込んでしまっているらしく全然全く意味がなかった。 |
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「・・・・お前、あれか。超サディスティックな上に、スカトロ趣味か。ド変態」 |
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もはや枯れつきた声帯を酷使して、がらがら、しゃがれたドイツ語で発声をしながら振り返ったら、でかい弟はぱっと顔をあげて、 |
見えない尻尾をはたはた振りながらオレの手を握りしめる。 |
握られた手は、温かい。でもって、壊れないように優しく握る。最中の時も、こんくらい優しくやってくれ、このむきむき。 |
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「兄さんのものなら、何だって」 |
「そんな果てしない愛に応えてやれる自信がねぇ」 |
「問題ない。俺がその分愛すから」 |
「問題大アリだ、ばかヴェスト」 |
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ばこんと力の出ない左腕で、整った顔を正面から殴る。 |
ルツはそれでも嬉しそうで、愛おしそうにオレの左手に頬を摺り寄せた。 |
愛しそうに、目を瞑る、オレの面差しによく似た顔。不器用に身体を擦る、無骨な掌。 |
結局、オレはマゾでもホモでもないんだが、最終的には同じように、こいつが愛しくてたまらないらしい。 |
こんな馬鹿げた変態プレイ、相手がこいつでなければとっくの昔に殺してる。 |
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ちょっと首を伸ばして、近くにある白い頬に、ちゅっと音を立ててキスをして。 |
取り合えずはマットレスと布団一式、あとはどろどろになったこいつのスーツもクリーニングに出して。 |
いやその前に、バスだバス。あと、客室のベッドの用意。シャワーなんかさっさと浴びて、さらさらのシーツでさっさと寝たい。 |
散々ベッドの上ではお前のわがままに付き合ってやってるんだから、後の事は全部お前がやってくれ。 |
はい、まずはオレ様をバスルームに連れて行く。体中痛いんだから、優しく抱けよ。 |
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そう、潰れた喉を酷使して命令したら、ルツは嬉しそうに「了解した、愛しい人」。そう言って軽い軽いオレの身体を抱き上げた。 |
全く、Sなんだか、Mなんだか。 |
思わず笑って、抱かれたままふっとい首に手を回す。 |
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ベッドでの問題は全く解決されないままだが、解決されないままでも、何だかんだ結構うまくいってるオレ達だ。 |
結局の所、SでもMでもお互い愛情があればまぁいいんじゃないかなと、最近では思い始めて来てしまったなんてのは内緒だ。 |
畜生、ほだされたなぁ、オレ様も。まぁ欲を言えば、もう少し、加減はして欲しいんだけど。 |
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愛しいお前の為だ、お兄様は頑張るよ。愛しき弟、可愛いオレのルートヴィヒ。 |
心の中で呟いて、抱かれて近くなった首元にキスをしたら、ルツはらしくなく照れて、小さく笑った。 |
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