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彼には、変わった性癖がある。
 
訂正、性癖が変わってしまったとでも言うべきか。
彼と、いわゆる肉体関係を持ってからは軽く二桁を越えるが、初期の頃は全くそんな癖は無かった。
彼は、変わってしまった。そして、自分の価値観も。
不都合は無いが、色々とひっかかる所があるのも確かだ。
ひっかかりを正そうとしても一度ほつれた糸はなかなか元には戻らない。
 
一体何処から何が引っかかっているのかわからないまま、今日も痩せて骨の浮いた白い彼の体を抱く。
 
 
 
 
性癖とは、即ちそのままベッドでの彼の態度だ。
以前の彼は兄弟の交わりに対して、こんなに積極的ではなかった。
 
「・・・ッ、あ、ルツ、ルツ、いい、そこ」
 
はしたないくらいに大きな声を上げて身を捩る兄を、腰を高く上げて上から突き倒す。
背面位からの挿入は、以前は嫌がっていた筈だ。今日の様に両手を拘束して首に紐をかけられる事も。
痣になるくらい背中や尻を叩く事だって、昔は萎えるから止めろと怒鳴られていたのに。
最近ではだんだんとエスカレートしてきて、昨日はついに教鞭にまで手を出した。
まだ血の滲んでる背中を湿った掌で叩く。高く上がる乾いた音に、それすら彼は悦いと鳴いて涙を流す。
昔は、こんなに痛みを求める人ではなかった。
頭の隅に軽く疑問詞を抱きながら、右肩を掴んで無理やり振り向かせる。
だらだらと唾液の流れる半開きの口に噛み付くようにキスをしたら、むずがるように首を振られた。
「っんー、んむ、んんん」
片手で細くなった顎を引っ掴んで、力ずくで口をこじ開ける。
反動でぶつかった歯に眉を顰め、そのまま角度を変えて口の中を蹂躙した。
 
「ッ、兄さん」
ぷは、と口を開放して、突っ込んだままうつ伏せの体位を引っくり返す。
視界が反転したのに驚く間も与えずに再度抽出を開始すると、ギルベルトは高く高く鳴いた。
 
悦いか悦くないかと聞かれれば、答えはノーだろう。
何度目になるかわからない挿入の所為で結合部は真っ赤に腫れあがってしまっているし、
数えていない程放った精液は恐らく枯れて、もはや彼の性器は勃ち上がってすらこない。
女じゃねぇんだからそういつまでも突っ込まれっぱなしでいられるか、と怒鳴っていた彼の体は、
使用用途が違うにも関わらず中で絡みつくように締め付ける。
何度か彼の中で放った自分の精液が泡立ち、ぐちゃぐちゃと音を立てる。その事を告げて、
いいのか、と聞いてみたら彼は「すげぇイイ」と泣いて、俺の腕に爪を立てた。
 
 
「っあ、あ、ルツ、瞳・・・瞳、舐めて」
 
 
二つ目。
彼が一番感じる性感帯は、眼球だ。
 
きっかけは、正上位でしているときに、ぼろぼろ涙を流す彼が可愛いと思って、涙を舐め上げたとき。
特に意識をせずにべろっと眼球を舐め上げたら、彼はひぁっと裏返った声を出して、
細い背中を弓なりに反らせて吐精した。
長く喘ぐのが好きな彼にしては、随分とその時は早いなと思った記憶はある。
まさか眼球だなんて思わないから、どこか敏感な場所でも突いてしまったんだろうと深く考えずにいたが、
次に事が及んだときに、38度5分の声で言われたのだ。
目玉を舐めて欲しいと。
気づいたのはこういった関係になってからつい最近で、そんなことは本人だって知らなかったそうだ。
 
涙腺から目じりまでなぞる様に舐め上げると、高い高い声を出して全身を振るわせる。
ゆるゆると中を掻き回す事は止めず、指で目をこじ開けて舌を突っ込むと、少し塩っぱい涙の味がした。
アメジストの瞳から流れるのは、彼の涙か、自分の唾液か。
眼球を傷つけないように広い面積で舐め上げ、噛み付くように眼輪筋に歯を立てると、
一層彼の薄い体がしなった。
 
「イイ、すげぇ。ルツ、もっと・・・」
 
ぐちゅぐちゅと音がなるくらい唾液を注ぎ込んでやると、彼は震えながらいい、と鳴く。
何がいいのかと聞いてみたら、中を掻き回される感覚によく似てるんだと言っていた。
俺が目玉を舐められても何も感じないのは、彼と違って内蔵をかき混ぜられたことがないからだろうか。
 
好きな体位は、正上位。
女ではあるまいに、色の薄い乳首をぎゅぅと引っ張ってやれば裏返った声を上げて全身を震わす。
今日のように。
舌先で舐めて、転がして、痛いくらいに噛み付いてやれば彼は痛ぇとぼろぼろ泣きながら「もっと」と強請る。
この体位が好きなのも、眼球と乳首を弄られながら突かれる事が出来るからじゃないだろうか。
 
ゆるゆると腰を前後に揺すりながら、眼球から舌を離すと、赤く充血した右目と目が合った。
眩しそうにぎゅうっと目を閉じると、目じりから透明な液体が落ちる。
べろりと舐め上げて腰を付き入れると、彼は気持ち良さそうに声を上げた。
前立腺を刺激しながら、ずるりとぎりぎりまで引き抜く。
アナルセックスというものは、抜くときの方が気持ち快いのだと聞いたことがある。
排泄感と似ているからだろうか。俺にはよくわからない。
彼も例に漏れず、やはり恍惚とした表情が見れるのはこうしてずるずると引き抜いている時だ。
間髪いれずに入れて、またぎりぎりまで抜いて。
ぐるぐると奥を掻きまわすと、彼は止めろと言って手を突っ張る。
 
「やめろ、いく、でる、ルツ・・・!」
「・・・今日は許可はいらない、いっていいぞ」
「ッや、だ、まだいきたくねぇ・・・、あ、っあ」
 
彼は首を振りながら、ぶるぶる震える腕で胸板を押す。
構わずに、前立腺を掬い上げるように細い腰を揺すったら、彼は悲鳴を上げて喉をのけ反らせた。
日焼けしていない太腿を担ぎ上げ、彼の腰の下にもはや意味をなさない枕を入れ込むと、
結合部は余計深くなる。
露になった彼の秘所に、自分の性器が出入りしている様子を見て、自分も柄にもなく興奮した。
いやだいやだと泣く彼の体を押さえつけ、ずこずこと腰を突き入れると、彼は戦慄きながら目を見開く。
ルツ、ルツ!ぼろぼろ涙をこぼしながら、シーツを握りしめて。
ああ、すごい。
搾り取られそうな程締め付けてくる括約筋。
恍惚とした顔や全身はすっかりと脱力しているのに、ここだけはうねる口内ように絡みついてくるのは、
人間というものは全く良く出来ていると思う。
それとも、彼だけがこうなのか。
わからない、俺は彼しか知らないから。
身体の下で、もはや出るものが無くなってもひくひくと身体を振るわせる、彼しか。
上ってくる激情に耐えながら、続けざまに腰を叩きつけると、
文字通り彼は高い悲鳴を上げてひきつけの患者のように全身を強張らせる。
 
「ル、ルツ、ルツ、ッルツ!やだ、やめ、」
興奮する。
難なく組み敷ける細い体も、否定の言葉を叫びながら銀色の頭を振る様も、そのくせ絡みつくように迎える後ろの性器も。
 
聞く耳持たずに前立腺を擦り上げたとき、彼は高く絶叫して全身を硬直させた。
ぱたぱた、とゆるい透明な液体が彼の形のいい臍の中にたまる。
・・・・まだ、出るものがあったのか。舐めたい。
量も少なく、色も薄い半透明なそれを手で伸ばして、彼の乳首まで塗りたくる。
ゆるゆると腰を動かしながら、見せ付けるように掌を舐めたら、中がびくりと反応するのがわかった。
 
 
 
ぜぇ、ぜぇ、上下に揺れる胸、恍惚とした、赤い瞳。
がくがく揺さぶって、出るものも出なくなって、ほぼ苦痛しか感じられない状態になってから。
それでようやく、ここから彼が好きな時間に入る。
サンつ目。
この人は、恐らくマゾヒストだ。
 
 
「っん、あ、痛、奥イヤだ・・・!」
「いい、だろ、兄さん。縛ってやるから、泣かないでくれ」
「ッヒ、あ!」
 
 
あの冷たい国から帰ってきてから、彼の好みは変わってしまった。
痛みに反応するようになり、罵りの言葉一つでも赤い目はとろりとすぐに溶ける。
愛してると叫ぶよりも、侮蔑の言葉で責める方が喜ぶようだ。
変態、すきもの。弟にこんな事されて、こんなになって。恥ずかしい。
イヤだという否定の言葉は、彼の中での肯定だ。やめろというのは、もっとしてくれという事に他ならない。
突っ込んだまま、くたりとした性器をぐるぐるに縛り上げてぐっと両手で喉を絞めあげたら、
彼はひゅくっという音を立てて首をがくんと落とした。
 
「・・・落ちないでくれ、兄さん。まだ終わってない」
「・・・・・ッ!は、げほ、かは」
 
ぱぁん、と頬を叩いて意識を覚醒させる。
緩く首を絞めた状態で腰骨を壊さんばかりに強く奥を抉ったら、彼はアタマって絶叫した。
もう、身体には力は何も入らない。くたんとした腰をひっくり返して、後ろから肩を押さえつけて突き荒らす。
半開きの口からだらだら涎を垂らして、ひんひんと鼻を鳴らして。
それでも湿った手で何度か白い尻を叩いてやって「いいのか」ともう一度聞いてやれば、
彼は朦朧とした意識の中でこくこくと首を振って頷いた。
 
 
離れていた間に、彼に何が起きたのかはわからない。何をされたかなんて、聞きたくない。
彼に合わせて俺の性的思考もだいぶ変化はしたが、この兄が喜ぶのならば、それが俺の喜びだ。
愛しい兄、ギルベルト。
この蜜月が永久に続くとは思っていないが、だからこそ全身全霊を掛けて、貴方を愛そう。
これが、歪んだ愛情と関係だと、罵られても。
 
 
「・・・・顔を、兄さん。かけさせてくれ」
 
 
後ろから無理やりな体勢で顔を向かせて、埋めていた性器を引き抜いて。
銀髪を掴んで、涙に濡れた虚ろな顔に噛み付くようにキスをしたら、兄は少しだけ嬉しそうに頬を緩めた。