「・・・兄さん、まだへばらないでくれ。まだ終わってないぞ」
そう言って、くたりとした身体にばしゃっと水をかけたら兄はびくっと細く痩せた身体を縮こませた。
「・・・ッ冷て、ぇ」
「腰を、下げないでくれ。抜ける」
「ぅ、あ、・・・・ッも、う、いいだろ、ルツ!」
ルツ、という俺を呼ぶ声は、裏返った悲鳴として掻き消えた。
細い、仙骨の浮いた腰を両手で抱えて、後ろから強く押し付ける。
何度か前後に揺さぶると、ぐちゅ、と鳴る水音。何時間か前に大量に注いだローションか、
それとも先ほど自分の放った精液か。
ぐっと開いて、わざと音が鳴るように揺さぶり上げたら、兄は泣きそうな声で悲鳴を上げた。
もう、無理だ、イヤだ。
高いベッドの柱にくくりつけた両手、マットレスに沈みきる事の出来ない上半身。
よくなめした皮の紐で縛り上げた身体は、赤い擦れ跡が血を滲ませて、それが何とも腰にくる。
真っ黒な紐も、浮かぶピンク色の擦れ跡も、滲む赤い色も。
透き通ってしまいそうなこの人の白い肌に、何ともよく映えると思った。
「・・・ああ、兄さん。すごい、もっと、鳴いてくれ」
「う、ぁあ、あ!イヤだ、もう、ヤだ・・・・・・・ッ!」
「あと一回、イッたら解いてやるから」
「・・・・・・・ッ!!!」
びくん!
前に手をやって、すでに力を無くしているものをぎゅぅっと握ってやったら、兄の身体はばね仕掛けの人形のように
勢いよく跳ねた。
途端に、とろとろになってる中もきゅぅっと収縮して、絡みつく。
直腸なのに。最初のうちは、こんな反応はしなかった。
痛がって、暴れて、一度も射精する事なく嘔吐して、次の日には高熱を出して倒れてたのに。
人というものはどんな事にも順応する。環境も、身体も。
特に順応能力の高いこの人の体は、少し調教してやっただけでもすぐに馴染んだ。
ぐ、と性器を握って軽く扱くと、ギルベルトは鼻に掛かった泣き声を漏らす。
高い位置で縛られた両手、沈み込む細い肩。腰を大きくグラインドさせて
握っているものに爪を立てれば、彼はやめろと言って前を膨らませた。
「っは、は、っぅあ、あ!も、やめ、」
「解いて欲しいか?」
「っぅあ!ったり、前だ、バカ、あ!」
「可愛くない」
ぎ、音を立てて、締め付けている首の縄を引く。
ひゅくっと音を立てた喉は、すぐに離してやれば苦しそうにげほげほと咳き込む。
腰の動きを止めないまま、何回か首を締めて、緩めて、を繰り返していたら、
兄はぼろぼろ涙をこぼしながら「解いてくれ」と泣いた。
半勃ちになってる彼の性器には、体を縛り上げてる物とは別の、赤い紐。
くるくると根本から巻きつけて、リボンのように縛り上げたものからは、可哀想にずっと
だらだらと透明な液しか垂れていない。
きゅっと紐を引っ張って先端を刺激してやったら、ギルベルトは頭を振ってぎちぎちと縛られている両手を鳴らした。
始めてから、もう何時間だろう。
腹の中を洗って、代わりにローションをたっぷり注いで、精を吐き出す出口を縛り上げて
前立腺をごりごり擦る。
何度か失神してはその度に叩き起こして、水を浴びせては身体を揺さぶる。
だんだんと意識がトんで、目が虚ろになっていく兄を見るのは、血が沸騰しそうになる程興奮した。
「もう・・・っ、頼む、ルツ、止めてくれ」
「・・・・おかしい、そんな言葉は教えてないだろう?兄さん」
「あ、ぅ、ア!」
ぱぁん、赤く腫れた尻を叩けば、彼は悲鳴をあげて体を捩る。
流石に萎えるかと思って前を握ってやったら、面白いくらいに腹筋につく程反り返っていて、思わず声をあげて笑ってしまった。
本気で、痛みで感じるようになったのか、この人は。
人に痛みを与える事で快感を感じる俺の性的欲求を満たしてくれる相手はなかなかいない。
自分の狂気染みた嗜好を知っているからこそ、体を重ねる相手を作った事はなかったが、一度タガを外してしまったのはこの兄だ。
俺はやめろと、制止したんだ。
兄を、傷つけたくはなかったから。幼い頃からやましい欲求を抱えてる事を、知られたくはなかったから。
何よりも、尊敬してる兄をそんな風に見てる、自分を認めたくなかったから。
貴方が悪いんだ。兄さん。全部、全部、貴方が。
「俺が欲しいと、泣いてくれ。プライドなんか捨てて、俺だけだと。兄さん」
ぐちゅ、ぐちゅ、突っ込んだ小さな穴から白い泡が立つ。
銀色に光る髪を引っ掴んで枕に埋もれてる顔を無理やり上げさせて首筋に噛み付いたら、
兄は声にならない声を上げて涙を流す。
悲鳴は、もう声にならない。叫びすぎて、声帯が働かなくなっているのかもしれない。
血を啜る吸血鬼のように思いきり齧りついてじゅる、と唾液に濡れる音を鳴らしたら、少し鉄臭い血の味がした。
「ほ、解け、前、解け・・・・ッ、ルツ!」
「・・・・俺があと一回イッたらだと、言ってるだろう。ほら、もう少し締めてくれ」
「っぅあ!あ、あー!ヤだ、おかしくなる・・・・・・・ッ!」
声を裏返させながら叫ぶ兄の声は、恐らく屋敷の外まで聞こえてるだろう。
広い敷地、誰も入る奴は居ないとは思うが。聞きたい奴がいたら、聞けばいい。
普段は尊大で、人に屈することが何よりも嫌いな、自尊心の塊みたいなこの人が。
夜はどうやって乱れるのか、乱れさせられているのか、。
手を高く縛りあげられて、祈るような格好で兄弟に犯されているのかを、見たい奴らがいるのならば、見ればいい。
そうすれば、この人は俺の、俺だけのものだと、声高に見せつけてやれる。
は、と息を吐いて、首から唇を離して、たらりと血が流れる細い首を両手で締め上げる。
片手でも一回りしてしまいそうなか弱い首は、少し力を入れただけできゅぅっとおかしな音を立てた。
「・・・ッか、は、げほ、・・・・ッ!ッ!!」
「・・・ッ兄さん、兄さん!」
「・・・・・・・・・ッ!!ル、」
びく、
頭が真っ白になる、眩暈のするような衝動をぎゅぅっと目を瞑ってやり過ごし、最奥の直腸に自分の精を叩きつけた。
何回か腰を振って最後まで絞り出している間に、兄の体はくたんっと落ちる。
首に手をやっていた為、支えをなくした体はずるっと自分の性器を抜いて、ぐにゃっとシーツに崩れ落ちた。
開いている第二の性器からは、とぷとぷ流れる、自分の精液。
しん、と動かない兄の頭を掴んで顔をあげたら、紙のように白くなった顔はくたりと生気を失っていた。
・・・・・・・・・・・・また、トんだな。
はぁはぁと乱れた自分の呼吸を少し抑えて、髪の毛を引っ掴んで、ぴくぴく痙攣する瞼をこじ開けて舌を突っ込む。
しょっぱい涙を眼球から舐めつくした後に、右手でぱぁん、と頬を叩いて覚醒させた。
「・・・・・・・・・ッ、ル、ツ」
ぼんやりと焦点の合わない瞳は、俺を見て少し怯えている。
無意識に喉が鳴って、酸欠でチアノーゼを起こしている唇に、噛みつくように口づけた。
奥に引っ込んでる舌を齧れば、苦しそうなくぐもった悲鳴。呼吸をしたいのだろう、顔を捩って唇を開く。
それすらも手でふさいで無理やり舌を突っ込んだら、兄はかくりと首を倒して力を抜いた。
「・・・・・落ちないでくれよ、兄さん。約束通り、解いてやるから」
「ッ、はぁ、はぁ、げほ、・・・・あ、ル、ルツ」
「お楽しみはこれからだろう?さぁ、いい声で鳴いてくれ」
しゅるりと赤い紐を解けば、とろりとした赤い瞳がうっとりと溶ける。
きゅ、と握って何度か上下に扱いてやったら、彼は小さく「あ、」と悲鳴を上げて喉を晒した。
まだまだ、夜は長い。
ゆっくりと時間をかけて、この人が、俺無しでは生きていけないように。
俺に膝まづいて、泣いて、俺から離れられないように、以前の俺がそうだったように。
貴方を閉じ込めて、教え込もう。
お楽しみはこれから。俺をこんなにしたのは、貴方だ。
愛しい、愛しい。ギルベルト。