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「・・・・・・しつこい」 |
「・・・・・・・・・は?」 |
「しつこい、ん、だよ。前戯が!」 |
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ぜぇぜぇ。 |
整わない息を、肺を叱咤して、ぐわっと起き上がって足の間にいる弟に怒鳴りつけると、 |
でかい弟は一瞬眉を顰めた後、ああ、という顔をして身体を起こした。 |
少しだけ日焼けした、やけにでっかい胸板。胸囲だけ測ればその辺のグラビアアイドルなんて目じゃない。 |
ルツはぐい、と口元を手の甲で拭うと、べろっと犬みたいにオレの顔を舐めた。 |
ぬるぬるする。気持ちが悪い。 |
やめろてめーと髪を引っ掴んで唸ると、ルツは軽く笑って腰の辺りを擦る。 |
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「挿れて欲しいと言いうおねだりだと思っていいのか、兄さん」 |
「・・・・お前、言うようになったじゃねぇか」 |
「おかげさまで」 |
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ちゅぅっと音を立てて首にキスを落としながら、奴はぐい、とオレの足を持ち上げて広げる。 |
いて。噛んだな、野郎。 |
いくつかのキスマークをつけられて、ぞくぞく背筋を震わせながらされるがままに足を開く。 |
こいつ、最近オレが外に出ないからって、やりすぎじゃないか。 |
ハイネックでも着ない限り見つけられてしまう、派手に散ったキスマークは独占欲の表れか。 |
逆に言えば、コレのおかげで外に出るのがイヤになって、必要最低限の外出しかしてないオレだ。 |
消える前に、次から次へとつけられるからいつになっても首のストールが取れない。 |
仕返しみたいにぎぎっと肩に爪を立ててやれば、ルツはそれすら愛おしそうにオレの手を取って、甲に小さく口付けた。 |
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「・・・はっずかしい、お前」 |
「・・・何が」 |
「その顔で、気障ったらしいこと・・・っあ、ぅ、」 |
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ぐ、と両手を一まとめに掴まれて、右手を添えながらでっかいのが進入してくる。 |
何べんやっても最初に挿入するこの瞬間だけは慣れなくて、入り口を広げられると同時に |
冷や汗がどっと噴出する。 |
ぎっと奥歯を噛んでやり過ごそうと、は、は、と短い息で衝撃を逃がす。 |
一気に奥まで入れずに何度か入り口を小刻みに動かされて、ぼろっと生理的な涙が出た。 |
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「な、に、してんだよ・・・ッ気持ち悪ぃから、早く、ッあ」 |
「待ってくれ、きつい」 |
「だっ、から、ローション使えって・・・!」 |
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はぁ、はぁ、自分の呼吸が煩い。 |
力任せに握られた両腕が痛くて抗議すると、暴れるだろう、と言われて益々強く握られた。 |
暴れねぇよ、もう、今更。 |
ぎちぎちと進入を拒む身体は、オレの身体が強張ってる所為じゃない、単純に滑りが足りないだけだ。 |
それでも無理やり押し込んでこようとするバカな弟に向かって、切れる、バカ!と怒鳴ったら、 |
ルツはちっと舌打ちして途中まで入ってたものをずるっと引き抜いた。 |
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「っう、ぁ」 |
「何処だ、ローション」 |
「知らね・・・あ、ッや、ゆ、指、挿れんな!」 |
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抜かれた性器の代わりに、長い指が何本か突っ込まれてばらばらと中を動き回る。 |
前立腺を引っ掻きながら擬似セックスのように前後に動かされるそれに、頭を振ってイヤだと叫んだ。 |
こいつ、ちょっと前までは何にも知らない、否、想像の世界でのみ自慢の技をご披露していた童貞だったクセに。 |
もうこんな関係になってからどれ位経つのかなんて覚えちゃいないが、 |
とにかく何でも上達の早い自慢の弟は、こんな事でもみるみるその手腕を発揮して翻弄する。 |
自慢じゃないが、オレだってそこそこ経験はあったんだ。コッチ側は未経験だけどよ! |
それでもこんな風に泣かされるようになるなんて。畜生。情けないことこの上ない。 |
声も抑える事を忘れ、喘がされるままに涙を流す。 |
そのうちに指がずるっと引き抜かれて、は、と声を上げたと同時に冷たいローションが下半身にぶちまけられた。 |
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「ッ冷てぇ!」 |
「あまり使いたくないんだ、こんなもの」 |
「無茶言うな、バカ、ッあ、・・・・ッーーーーーーーー!!」 |
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尻の窄みまで冷たいローションを馴染ませられたと思ったら、間髪居れずに、最奥まで突っ込まれた。 |
余りにも、あんまりにもでかい衝撃に目の前で星が散る。 |
息をするのも忘れてがちっと身体を強張らせていたら、耳元で名前を呼ばれて性急にがくがく揺さぶられた。 |
身体が、感覚が追いつかない。 |
頭上で握り締められてる両腕を外そうと、ぎしぎしもがきながら、やめろと喉も裂けんばかりに悲鳴を上げた。 |
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「痛って、ッあ、ルツ、ルツ!!痛ぇよ、痛ぇ・・・!」 |
「っ、すごい、兄さん」 |
「やめろ、あ、っあぁあ!」 |
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どうしてこいつのセックスってのは、いちいち乱暴で性急なんだろう。 |
前戯まではしつこいくらいねちっこい癖に、突っ込んでからは尻に跡がつくくらいきつく掴まれて、 |
骨盤が壊れるくらいに強く打ち付けられる。 |
悦いか悪いかなんて聞かれたら、正直感覚だけで言えば後者だ。 |
直腸を容赦なく掻き混ぜられる未知の感覚は未だに慣れなくて気持ちが悪いし、 |
狭い入り口を無理やり広げられて進入される時の圧迫感はなんべんやっても収まらないし。 |
最初のうちは耐えていた声も、最近では無理やり口をこじ開けられて指を突っ込まれるから、 |
歯を食いしばって耐えてるのもバカらしくなって、止めた。 |
頭上で拘束された両手では、ぼろぼろ流れる涙も拭う事が出来ない。 |
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「ッあ、ルツ、ルツ、そこ」 |
「・・・・・・・どこだ?ここか」 |
「っあ、あ!もっと、」 |
「・・・・・・・・・可愛い」 |
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可愛いわけあるか、こんな骨ばった男捕まえて。 |
がくがく揺さぶられながら前立腺を容赦なく擦り上げられて、悲鳴のような嬌声を上げる。 |
男の身体ってのは、単純だ。 |
気色悪いと思ってた感触でさえ、前立腺という男のみが持つ性感帯を弄られれば簡単に勃起するし、 |
扱けば出る。 |
出す時は気持ちいいし、気持ちいい事は大好きだ。だから、出来れば、気持ちいいことだけをして欲しい。 |
こうやって、好きな所だけを突いてもらって、さっさと出して、さっさとシャワーでも浴びて、とっとと寝たい。 |
はっ、はっ、と獣みたいな息を吐きながら、もっと、とでっかく育った弟に強請る。 |
あ、そこ、そのまま、もっと。あ、やべ、イけそう。 |
出る、とぶるぶる内腿を揺らしながら言ったら、はずみでぼろっと涙が出た。 |
あ、クる、いく。目が眩む。次の瞬間、残念ながら、その期待は裏切られた。 |
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「ッッツ!!ぅあ、あ!ちょ・・・ッな、何しやが、」 |
「試してみたい事があって、協力してくれ」 |
「何っ・・・あ、あぁぁぁあぁぁああああ!痛ってぇぇええええ!!」 |
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イきそう、イけそう、と思ってぎゅぅっと目を瞑って激情を待っていたら、急激に急所を握りつぶされて、 |
何が起こったのかと目を見張って、叫んだ。 |
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突っ込んだまま、器用に腰を動かしながらベッドサイドからルツが取り出したのは、金属製のかちりとしたリング。 |
ベルトみたいに引き絞る金具のあるそれは、大きさ的にちょうど手の平程の円周で、 |
握ったままのオレの性器に被せようとする弟に、オレはまさかと背筋を冷やす。 |
ちょっと、ちょっとちょっとちょっと、待てコラ待て待て、それはヤメロ!! |
射精寸前の性器はそんな怪しい小道具を見ても萎える事はなく、想像通りに根本までするりと落とされてから、 |
容赦なくぎゅぅぅっと、搾られた。 |
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「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッッッツ!!!!!!」 |
「・・・・まだ、もう少し搾れるか?」 |
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カチ、カチ、と音がして、更に性器の根本でリングが搾られる。 |
爆発寸前だったものは出口を無くして、勃起したままの状態で赤黒く変色する。 |
余りの痛みに、声が出ない。身体が震えて、歯の根が合わなくなる。 |
寸止めとか、もうそんな問題じゃない、余裕が無い、痛い、痛い、痛い、痛ったい!!! |
顔面蒼白で油汗を流すオレに、リングを付けられた性器に満足そうな顔をして笑ったルツは、 |
突っ込んだままオレの身体を引っくり返して、バックの状態で再度挿出を開始した。 |
狙うは、先ほどまでオレの身体を翻弄してた、前立腺。 |
突き抜ける射精感と、それを無理やり抑えられてる根元のリングに、頭がパニックを起こして、目が廻る。 |
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「ッあ、ぁ、あーーーーー!!痛ぇ、痛い、痛い!!痛ぇよ、やめろ!ルツ!!!」 |
「昔の拷問道具だったそうだ、射精の出口を止めて、ひたすら前立腺を擦り上げる。 |
誰が考えたんだか、全く変態的な拷問だと思わないか」 |
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変態はてめぇだ!!!! |
怒鳴って蹴っ飛ばしてやりたい所だが、正直身体がそれどころじゃない。 |
身体全体からどっと出る脂汗、前で押しとどめられてる性器の他に、後ろから容赦なく突き上げられる、でっかいバズーカ。 |
やばい、意識が、意識が、飛ぶ、飛べない、痛くて!! |
ぅあ、あ、やだ、痛い、頭の悪い女みたいにイタイという単語しか出てこなくて、オレはただただ早く終わってくれと願って、泣いた。 |
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「どんな感じなんだ、兄さん。行き着くところは二つ、狂って発狂するか、射精無しでもオーガズムを得られるようになるかだそうだ。 |
貴方はどちらになるのか、興味があって」 |
「っあ、あ、あ!!やめっやめ、やめろ!外せ、コレ、外せぇぇぇぇえええ!!」 |
「後者になってくれるなら、嬉しい。俺が作り上げたようで」 |
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腰の動きが早くなる。はっ、はっ、はぁ、耳元でこいつの息が煩い。 |
片手で痛いくらいに尻を掴まれて、もう片手でぱんぱんになってる前のものを握られて。 |
全身が敏感になってる状態での擦り上げに、それこそ発狂するんじゃないかと思うくらいに頭が沸騰する。 |
痛い、イきたい、痛い、痛い、痛い、出したい、イきたい!! |
腕を立てて迎えてたドギースタイルはくちゃっと崩れて、マットレスに顔を埋めてシーツを噛んでぎりぎりと歯を立てる。 |
何とか自分でリングを取れないかと両手でかちっと弄ったら、後ろで軽く舌打ちされて、 |
ぐいっと力任せに引っ張られた。 |
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「ほら、やはり貴方の手は縛っておかないと」 |
「イッ・・・・・・・!!あ!あ、あ!!いやだ、いやだ!!外せ、外せ、イかせろ!クソがぁぁああ!!」 |
「だったら、コレをつけた状態でイってくれ、兄さん」 |
「死ね、クソ、あ、っひ、あ、ッ、ーーーーーーーッ!!」 |
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ぎっしぎっし鳴る、スプリング、後ろから聞こえるのはぐちゅぐちゅいう水音、ローション。 |
プラス耳元で聞こえる獣のような息使いに、テノールの、耐えた喘ぎ声。 |
本気でこんな状態のオレに興奮してるのかと思ったらますます前で堰き止められてるものが膨張して、激痛に体ががくがく震えた。 |
やば、やばい、死ぬ、死ね、こいつ、本気で。 |
ひ、は、と声は声にならず、更に後ろからでかい手で首を絞められて、そのままオレは失神した。 |
狂って発狂するか、射精ナシでもイけるようになるか。残念ながら、お兄さまは前者のようだ、ルートヴィヒ。 |
その後すぐに水をぶっかけられて意識を覚醒させられて、髪を引っ掴まれて口にも突っ込まれて、 |
ようやくリングを外して貰えた時には、逆にもう出てる感触はなくて、オレは壊れた精神患者みたいに泣きながら、とろとろと力なく射精した。 |
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全く、全く気持よくも何ともない、大した最悪のプレイだった。 |
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※ |
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「・・・・・・・・・という訳で、今後何かしたいプレイがあるのならば、事前にオレ様に許可を取ってからにするように」 |
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潰れた喉を酷使して、バスでオレの体をごしごし洗ってるルツにじとりと言うと、ルツは不機嫌そうに眉を顰めた。 |
・・・何だ、その顔、畜生が。この畜生が。同じ事をお前にもしてやろうか、このすーぱードS鬼畜生が。 |
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「事前に申し出た所で、頷いてはくれないだろう、貴方は」 |
「当たり前だ。セックスってのはなぁ、基本的には愛の行為だ、愛の! |
お互いの合意があってこそ成り立つものなんだよ、このスーパー御馬鹿さんが!」 |
「俺にとっての、最上級の求愛だ。あれは」 |
「・・・じゃぁ、今度俺からの求愛も受け取ってくれ、弟よ。愛はギブアンドテイク、いつも貰ってばかりじゃ悪いからな」 |
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力の入らない手でぺちぺち頬を叩きながら掠れた声で言ったら、弟は少し笑って、 |
「いつも貰ってるから、問題ない」とクソ生意気な事を言って、オレの身体を抱きしめる。 |
なんだよ、ばーか、わかってんじゃねーかと、少し喜んでしまったオレってば、相変わらず単純だと、つられてこっちも笑ってしまった。 |
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