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「……ぅ、あ、」 |
「……あつい」 |
「あぁ、あ、あぅ、あぁ、ああ、ん……」 |
「ねぇ、暑いよ……」 |
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クーラー入れようよ。 |
そう言って、汗に濡れた身体から手を離して、俺は少し遠くに放っぽってあるリモコンに右手を伸ばした。 |
その後すぐに、ぱしん、と湿った手で内腿を叩かれる。 |
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「集中しろよ……」 |
「暑いんだってば」 |
「オレが動く」 |
「それでも暑いよ……」 |
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はぁ、と湿った息を吐いて、彼は開いた足を更に大きく開いて、ゆるりと動く。 |
お腹につきそうなくらいに反り返った性器を、見せつけるみたいに。 |
日に焼けて無い、白い喉が反る。 |
は、っぁ、 |
俺の腹に手をついて彼がゆっくり腰を上げたら、突っ込んでる自分の性器が丸見えになった。 |
ローションの泡立つ、結合部。 |
その後に、すぐに彼は嬌声を上げて、体重を掛けて沈み込む。ぬるぬるした内部に、引き込まれる。 |
ぽたぽたと彼の額に浮いてた汗が腹に落ちて、俺の臍のくぼみに、小さく溜まった。 |
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「アル、っある……、あ、あぁ、あん、あぁ、」 |
「……俺も、動きたいんだけど」 |
「や、だ、っあ、ああ、気持ちいい、すげぇ、あ、あっ……」 |
「……ほんと、あつい……」 |
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…………嫌な季節になるなぁ…………。 |
ぐしょぐしょのシーツに、湿気の高い部屋、お互いに汗だくの、滑る身体。 |
セックスの最中に、不快指数はどんどん上がる。 |
お互いの湿った息が響く狭い部屋で、俺は身体の上で揺れる彼と手と手を絡めて、少し伸びあがって、目を瞑ってキスをした。 |
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※ |
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セックスなんてのは、汗だくになって、色々ドロドロになってやるもんだろ。 |
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真夏にするセックスが、好きだと言う。 |
終わった後に、情事後の色気もムードもへったくれもない、全裸に胡坐、プラス煙草にビール、という何ともおっさんくさい格好で彼は言った。 |
ぷふー、と俺に煙がかからないように、横に煙を吐いて、彼はペットボトルに口付ける。 |
少し赤みの強い、ピンク色の唇。 |
ボトルから溢れた液体が口の端から流れて、首筋を通って、乳首の辺りまでつつうと垂れた。 |
キス、したいな。 |
そう思って身体を起こして顔を近づけたら、逆に顎を掴まれて、上唇をかりっと噛まれた。 |
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「……暑い、ねぇ、もうつけてもいいだろ?エアコン」 |
「やだ」 |
「男役って大変なんだぞ……暑くて。こんなサウナみたいな部屋でしてたら、そのうち俺倒れるぞ」 |
「役割交代するか?」 |
「やだよ」 |
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笑って煙草の吸い口を吸う彼に、軽く口を尖らせる。 |
それ、美味しいの?昔何回か聞いた事を再度聞いてみたら、昔と同じ答えが返ってきた。 |
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「口寂しいから、吸ってんだよ」 |
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じゃあ、俺とずっとキスしてればいいと思う。 |
「してよ、」とまだ汗の引かない首に腕を掛けて後頭部に手を回したら、アーサーは煙草の火を消して、 |
少しだけ躊躇った後に、俺の唇に唇を重ねた。 |
煙草と、ほんの少しのビールの味。あと、……これは多分、俺の精液の味だ。 |
舌を絡ませて、角度を変えて、ん、と音を立てて深くする。 |
彼のキスは気持ちが良くて、いつも主導権を握ろうと頑張っても、いつの間にか握られてる。 |
なぞられる歯列に、根元から舐めあげられる、舌。 |
時々、ちゅ、と音を立てて離れて、その後に両頬を包み込んで、口を塞がれて、熱い舌を突っ込まれる。 |
息をつぐタイミングが、わからない。 |
はぁっ、と一旦自分から顔を離したら、彼は少し不服そうな顔をして、俺をぐちゃぐちゃのシーツの上に押し倒した。 |
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「何逃げてんだよ」 |
「苦しくて」 |
「へたくそ」 |
「君が上手すぎるんだよ……」 |
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湿ったシーツは、やっぱり結構、気持ちが悪い。枕だって、色々、べとべとだ。 |
のし、と上に乗られて、汗で濡れた前髪を掻き上げられる。 |
そのまま、額にキス。こめかみ、まぶた、頬、鼻の上。 |
「瞳、開けてろ」と言われてきょとんと彼を見ていたら、舌が目の中に入ってきた。 |
感じた事の無い痛みと感触に、「痛ぁ!」と俺は悲鳴を上げる。 |
アーサーは笑って、「お前には早いか」と、自分の前髪を掻き上げた。 |
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「早いとか早くないとかの問題じゃないだろ。目玉を舐めるなんて、おかしいよ」 |
「気持ちいいんだよ。慣れると」 |
「……君は好きなの?」 |
「うん」 |
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俺の手を頬に持ってきて、すり、と顔を擦りつけて、彼は気持ちよさそうに目を瞑る。 |
……瞑った後に、すぐに緑色の瞳を薄く開けて、俺に口の形だけで「舐めて」と小さく笑った。 |
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※ |
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「んっ」 |
「……わっ」 |
「なん、だよ、」 |
「……今、眼球の形わかった」 |
「……もっと」 |
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全裸で俺の身体を跨いで、騎乗位みたいな格好で、アーサーは俺の身体に上半身を擦り寄せる。 |
手は、二つとも俺の乳首に。君じゃないんだから、感じないぞ。 |
そう、眉を寄せながら伝えたら、「いつか開発してやる」と、俺の有る訳の無い胸を揉みながら、彼は言った。 |
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俺は、もう一度彼の緑色の瞳を開かせて、宝石みたいな眼球に舌を這わせる。 |
ぴくん、と彼の身体が跳ねた。 |
ぺちゃ、と音を立てて、ゆっくりと目の縁をなぞる。 |
その度にびくっ、びくっ、と大きく跳ねる背中に手を回して、撫でる。 |
背中にはぶわっと鳥肌が立ってて、ああ、やっぱり気持ちいいんだと、変なの、と少し思った。 |
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「ん……」 |
「っあ、あぁっ、あ……、あっ」 |
「……気持ちいいの?これが?」 |
「ぁ、いい、ある、アル、あ、んん……」 |
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彼の涙と俺の唾液が混ざって、ぐちゅぐちゅ言う。 |
ぎりっと彼の手が俺の腕を掴んで、深爪気味の爪を立てる。 |
背筋がぞくぞくする。甘い嬌声。 |
普段は冷たい身体が発熱しそうに熱くて、俺は彼の宝石みたいな瞳を舐めながら、手をさっきまで自分の性器を挿れてた場所に移動させた。 |
するりと丸いお尻を撫でて、柔らかく溶けてる入り口に指を一本、ぬるっと入れる。 |
びくっと強張る身体。とろっと出てくるのは、数分前に彼の中で出したばかりの、自分の精液。 |
大した抵抗もなく根元まで入った中指に、俺は彼の瞳から唇を離して、「やらしい」と耳元で小さく言った。 |
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「……っは、ぁ、ぁあ、あ……」 |
「……勃ってきちゃったぞ。君が変なことさせるから」 |
「っや、かきまわすな、あぁ、アル……ッ」 |
「……次、俺が動くから、エアコンつけさせて」 |
「やだ……」 |
「死んじゃうよ」 |
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あつくて。 |
水音を立てて彼の緑色の瞳にキスして、お尻を弄りながら、くるりと体勢を引っくり返す。 |
ひゃ、と声を出す彼を無視して、片足を持ち上げて肩に乗せたら、指を入れてる部分が丸見えになった。 |
白い液体で、汚れてる。 |
汗でつるつる滑る身体、目をぎゅっと瞑って喘ぐ彼。 |
挿れるよ。そう言って、復活したばかりの自分の性器を軽く扱いてゆっくりゆっくり押し込んだら、中は火傷しそうなくらいに熱かった。 |
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「ッあ、るっ、ある、アル、あぁ、アルぅ……!」 |
「……っは、ぁ、気持ちいい……」 |
「熱い、アルの、あ、っあぁ、あー……」 |
「俺もあついよ」 |
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部屋も、君も。 |
まるでサウナみたいな部屋の中で、汗だくの男が二人、呼吸を乱してセックスしてる。 |
ぎしぎし鳴るシングルサイズのベッド、換えの無いシーツボックス。 |
滑る足を両足肩に担いで、痩せた身体を折りたたんで。 |
泣きながら俺の首にしがみつく彼の腕は、やっぱり汗でびしょびしょで、すごく熱い。 |
熱くて、溶けそう。 |
下半身からぐずぐずになって、このまま倒れこんでしまったら、彼と一つになってしまいそうだ。 |
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「アル、フレッド、アル、アル」 |
「なに?」 |
「キス……キス、して」 |
「うん」 |
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上がった呼吸で耳元で言って、その後、整わない呼吸のまま唇を合わせて、熱が出そうなくらいの濃厚なキスをしながら、身体を揺さぶる。 |
アーサーは、キスの合間にさっき俺の舐めてた緑色の瞳から涙を零して、「好きだ」と俺の名前を呼んで、もう一度、熱い舌を絡ませた。 |
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夏は本当に苦手だ。 |
熱くて、すぐに部屋に湿気がたまって、外はからからで乾燥して、あと、この人が発情して、誘惑する。 |
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