「ひはははははぁっはははっはははは!!!ははははははああはははあははは!!!!」
ひぃひぃ、げふんげふん喉を鳴らしながら、ごろごろ転がって腹を抑えて笑っていたら、
目の前のフランツは「なぁによ、」と口を尖らせてこちらを睨んだ。
口を尖らせて。その、真っ赤に染まった、てりっとリップブロスを塗った、誘う唇で。
「ぶぁっっ、は!は、は、は、はははは!あははははははは!はははっははぁあははは!!!!!」
く、く、苦しい!!!
ばっしんばっしんと床を叩いて、四つん這いに突っ伏してひぃひぃ喉を鳴らして、勝手に痙攣する横隔膜を必死に押さえる。
しゃ、喋るな、その口で、そのカッコでふっつーに、太ッとい声で、オネェ言葉を使うな!
言いたい言葉は何一つ単語として出ては来ず、オレ様はぼろぼろあふれ出る涙を拭わずに床を叩く。
ぶるぶる痙攣する睫毛の間からちりと隣を見ていたら、同じように床に突っ伏したアントンの身体は、
ひくひくひぃひぃ、おんなじように震えてた。
「きっつい、きっついわ、ほんま、きっつぃ、ぃぃい・・・・!」
「さ、さ、さ殺人的に似合わねぇぇええええ!!!ガチだ、ガチのニューハーフだ!!」
「しっつれいね!!こんなセクシーな美丈夫捕まえて」
それ以上喋んな!と何とか怒鳴って、再度ばっしんばっしん床を叩く。マジで、本気で、腹、痛い!!
つーんと頬杖をついて足を組んだ、ショッキングピンクのすけすけベビードールを着たフランツに
隣にいるアントンは「せめて胸毛剃ってぇ!」とげらげら笑い泣きしながら懇願した。
始まりは、遠い米国、アルフレッド・ジョーンズに弟が教えてもらったカードゲーム。
ウーノ?と呼ばれるテーブルで出来る簡単なルールのカードゲームは、少人数でやっても案外結構面白くて、
教えてもらってからしばらくはルツとローデリヒとエリザベータと、4人で、毎晩遅くまで遊んでしまった。
自慢じゃないが頭が良くてカッコよくて運もいいオレ様は、ご期待通りにゲームも強く、
4人の中でもダントツ一位、ケセセーといつも笑っては一番弱い弟を見下ろして楽しんでいた。
「おっまえ、ほんと弱いな!何でアルファベットカードいつまでも持ってんだよ、アガれねぇだろ」
「・・・どうして兄さんは俺にドロフォーばかり押し付けるんだ」
「ルートヴィヒ、貴方の番ですよ。お早くなさい」
「・・・・・・・・・・」
「あ、やったぁ!ありがとルート。アガリ!」
「・・・・・・・・・・・!!!!」
「だーからなんっでそこでイエローに変えるんだよ!さっきからエリザの行動見てりゃわかんだろーが!」
「では私との一騎打ちですね・・・ハイ、スキップ。スキップ」
「・・・・・・・・・・」
「リターン。ウノ。はい、どうぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おや、これはどうも。アガリです」
「だぁーかーらーッ!!!」
もうどうしようもないくらいに殺人的に、狙ったように相手の求めてるカードばっか出す
要領の悪い弟に向かって、んがぁっと銀髪を掻き毟る。
「情っさけねぇ、弱い、弱すぎるぞこのむきむき!もーちっと頭使え、コレで20回連続ビリだぞ!」
「ほーんと・・・弱いわよね。ルート」
「貴方が居るとビリにならないですむと安心できますよ」
「おいこら、言いたい放題言われてんじゃねー!のーみそ筋肉、弱すぎんだよ!」
にこにこ笑いながら、優雅に紅茶なんて淹れ出すエリザに、同じく優雅に足を組んでカップを口元に運ぶお坊ちゃん。
ルツはというと、ぱちぱち火のなる暖炉の前で、床に散らばったウーノのカードを見つめながら
眉間に皺を寄せて黙っている。
その隣できぃきぃ騒ぐは、このゲームのクソ弱い弟の兄である、このオレ様。
弱い、弱い、情けない、ゲームでくらい勝ってみろ、敗戦国。
ばっしんばっしん背中を叩きながら叫ぶ言葉は、本心だ。
オレ様と同じ血を引いていながら、何と情けない、ふがいない。
所詮カードゲームだろう、と眉間の皺を緩めずに口を尖らす弟に、そのゲームでも一勝も出来ないバカは誰だ、と蹴っ飛ばす。
ふかふかの絨毯、ペルシャ織の毛足の長いそれはふかふかなだけでなく、ルームシューズを
履いたままではよく滑り、片足を上げて、てぃっとでかい身体を蹴っていたオレはそのまま足を掴まれて、尻から絨毯にスッ転んだ。
「痛ってぇ!」
がちん!
ふっかふかの絨毯の上でも、あまり肉付きのよくない尻は、身体のクッションの役目をしてくれない。
臀骨を大げさに打ったオレは、あにすんだ!と牙を剥いて、絨毯の上に散らばったウーノのカードを投げつける。
ばらばらとカードを投げつけられるは我が弟。オレの右足を掴んだままむっつり不機嫌に無表情、無言で投げつけられたカードを見つめてる。
赤、青、黄色、緑、たかだかこんな4色のカードすら操れなくて、どーすんだ。
だからお前は実践でも弱いんだ、カタブツ、むっつり、単細胞、身体ばっか鍛えてねぇでちっとは頭も、使え、この単細胞。
げっしげっし掴まれた方とは逆の左足で胴体を蹴っ飛ばしてたら、そこで、身体のでかい弟は頭に乗っかっていたカードを
はらはらひらひら落としながら。
オレの右足を引っ掴んで、そのままぐわっと立ち上がった。
おわっ!とバランスを崩されて、下半身が軽く宙吊りになる。
リビングでは、おや、とローデとエリザが顔を上げて。
何すんだよ、と絨毯に這いつくばったまま唸ったら、弟は苦虫を噛み潰したような顔のまま、同じように小さく唸った。
「・・・単細胞で、弱くて、敗戦国で、悪かったな」
「わかってんじゃねーか、ついでにカードゲームもクソ弱い」
「俺はいつも兄さんには勝てない」
「当たりめーだ、この、のーみそ筋肉」
「・・・・だが、俺にも兄さんに勝てるものがある」
「なんだと、言って」
みろ、という言葉を待たず、弟はオレの身体をがっしと掴んで、持ち上げて。そのまま肩に担いで、ルームシューズをひっかけて。
のっしと歩き出す弟に、慌てて後ろを振り返れば、エリザベータがによによデジタル一眼を取り出し、
ローデリヒは軽く眉毛を顰めて、こう言った。
「防音設備のある部屋は一番奥ですからね。ルートヴィヒ。間違えるのではありませんよ」
ざぁあっと血の気が下がって、おい!と荷物のように抱えられてる状態で、弟に怒鳴る。
相変わらずの、不機嫌面。少し高めの鼻、顰められた金色の眉、薄い唇は、オレの顔の作りと良く似てる。
ついでに・・・ちょっとした、ほんとにちょっとした事でもそこに地雷があれば、すぐにパーンと爆発してしまう、
キレやすい性格も。
「ベッドの上では、俺のほうが上だ。兄さん」
・・・どうやら、こいつにとっての地雷は、弱い弱いとバカにされ続けることだったらしい。
それが、例えカードゲームでも。たかだか、ゲーム。されどゲーム。
ざぁぁっと血の気が引く音が聞こえて、離せぇぇぇええええっ!!とじたばたしながらリビングにいる二人に助けを求め。
結局、こいつがどれだけベッドの上ではオレよりも強いかをこれでもかと言うほど教え込まれて、
それ以来、二度とこの家でカードゲームはやらないと心に誓った。
・・・で、話を戻す。
ひぃひぃ、涙を浮かべて叩くは、ぴかぴかに磨かれた大理石、ちらばるウーノの色とりどりのカード。
もう数えるのもイヤになるくらい散らかった酒瓶、ビール缶、ワインのボトル。
猫足のちょんっとした可愛い椅子に腰掛けて足を組むのは、この家の家主、ミスター・ボヌフォワ。
自慢の金髪を掻き揚げながら煙草をふかし、胸毛とチクビすけすけのベビードールで足を組みかえる様は、
場末のオカマバーのママ、もしくはヤケ酒の入ったドラッグ・クィーン。
軽くおちゃらけて「似合うでしょ?」とばちこんっとウィンクされて、更にオレとアントンは大理石の床に沈みこんだ。
「あ、あ、あ、もー、あかん、あかんっ、俺、無理やぁ!!くっぷ、くぁは、は、は、あはははは!はははは!」
「ひぁはっはは、は、は、はは、あははは!!あはははははは!!!直視出来ねぇ!!お前、まじ、リーサルウェポン・・・・ッ!」
涙を拭いながら、床においておいたままのビールの缶に口つける。
炭酸もすっかりぬけてぬるまったくなった黄金色のそれは、もはやビールと呼べるシロモノではないけど。
笑いすぎて、喉が痛い、ついでに身体の水分、全部目から出た。
ごっくと喉を鳴らしてビール缶をカラにして、んでもってその時に目の前のクソ髭が椅子を降りて
「うふん」とオレ様にしなだれかかるもんだから。
思わず口に含んでいたビールを、ぶはっと噴出して、目の前のフランツの顔にぶちまけた。
まぁ、大方予想はつくだろう。床に散らばったカード、大量のアルコールの残骸、この完全に出来上がった空気。
目の前にしなを作って女装する、胸毛とすね毛のわっさり生えた、フレンチメイド。
一番酒に強いのが誰かと聞かれれば難しいところではあるが、相変わらずオレ様はこの悪友3人の中でも
カードゲームはすこぶる強い。
知らなかった自分の才能に気を良くしたオレ様は、このウーノというカードを持って、フランツの家に来たわけだ。
そしたら偶然にもアントンが居て。結構いい感じに、出来上がってて。
ギルやーん!と抱きついてきたトマトに「ゲームやろうぜ!」とカードを出したら、フランツは
「10回連続で負けたらバツゲーム」と言いながらワイングラスをくるくる回して。
「ノった!」と意気揚々にゲームを始めるも、まさか言いだしっぺのこいつが一番弱いだなんて。
さっさと10回連続でビリになったフランツに、アントンが言ったこの言葉。
「女装してぇな、女装、フレンチメイドさん!」
いい、それ、おい、着替えて来い!とオレも笑いながら手を叩いて。
似合いすぎて下半身おっ勃てないでよ〜と笑いながら寝室に引っ込んで出てきたフランツに、オレたちは声もなく撃沈した。
「なぁによ、お前らが着ろっていったんでしょー。どうどう、このセクスィーなティクビ。吸ってみる?」
「嫌やー!毛、毛ぇ生えとる!ちくび毛生えとるこのオッサン!」
「お前だって生えてるでしょー!」
「ぷぁっは!は、はははははは!あははは!やめてぇな!ギル助けて、犯されるー!!」
ベビードールにひもぱん、何とも殺人的な衣装でアントンに馬乗りになって服を引っぺがすフランツ、
トマトは真っ赤になりながらも笑いすぎて力が出ずに、堪忍、堪忍、とひぃひぃしながらされるがままだ。
ちなみにオレ様、同じくもうだめ、完全ノックアウト。先ほど噴いたビールが気管と鼻に入ったが、もうどうでもいい。
本当にリアルにどうでもいいが、どうしてこいつの家にはすけすけピンクのベビードールが標準装備されてるんだ。
がはごほ咳き込んで、目の前の光景にまた笑って。いつの間にか丸裸にされたアントンはそれでもげらげら笑ってた。
「あー、おっかし、ほんま、なんやの、コレ、写真撮っとこ!」
「ヤメロ、アントン。レンズが割れんぞ」
「ひっど!ちょっと、お兄さんだけこんなカッコ、フェアじゃないんじゃない?バツゲームはコレで充分でしょ」
「どっちかって言うとオレ様たちのがバツゲームだ!」
「言えてる、言えてる、ちょぉ、ちょ、くっはぁっは、ははははあははあんま近寄んといてぇな!」
素っ裸のまま大股広げてビールをぐびぐび飲むアントン、バカで童顔でアホなくせに、意外にこいつは酒が強い。
いくらか見慣れたオレ様も、せめて前は隠せアントン、ついでにフランツ、お前全てにモザイク処理な。
ケセケセ笑いながらビールの缶をぷしゅりと開ける。
あー、マジで水分全部流れた。ビールで補給。ぐいぐい飲みながら、今の絵面を想像したら、また噴出しそうになった。
男三人大理石の床に座り込んで、一人は女装、一人は素っ裸、で、オレ様。一体何の集まりなんだ。
笑いながら先ほど少し疑問に思った事、「何でオマエそんな服持ってんだよ」と聞いてみれば、
フランツは「聞きたい?」と笑って寝室に引っ込んだ。
「じゃん!お兄さんのコレクション、ちなみに全部お兄さんサイズ!」
ばっさぁとリビングに落とされるのは、チェックのスカート、網タイツ、ナース服に、警官服。その他もろもろ。
思わずアントンと二人、かちっと固まって投げ出された衣類と、得意げに笑うフランツを見比べる。
てろっとした素材の・・・なんだこりゃ?パンスト?
うっわぁと思わず、やけに伸縮性のあるそれをびょんびょん伸ばしながら眉を顰めたら、
フランツはどっかとあぐらをかいて、どう、どう、と嬉しそうにぴろりと広げた。
「いいでしょーなかなか燃えるんだって。女の子にも大好評」
「おっまえ、本ッ気で変態だな・・・!」
「何を仰るギルベルト。セックスにルールは無いのよ、楽しんだもの勝ち、お前もそういってたでしょーが」
「って事はコレ、そういう時に使用済み!?いややん、きったな!」
「汚い言うな!」
ばっしんと持ってる服を投げつける、その手に持つのはブレザーにチェックのスカート、
おいおい、コレ、どこのガッコの制服だよ?見た事あるぞ!
ぐびぐびビールを飲みながらべろっと制服を捲ってみれば、アントンはすぐさま「☆◎△学園のや」と瞳を輝かせてぶんどった。
別に本人隠すつもりはないんだろうが、こいつも結構、マニアック。
「ちょーうどアントワーヌったら素っ裸だし、良い機会だからコレ着てよ」
「えー?コフランの使用済みなんやろ?いややぁ、何か変な汁ついてそぉ」
「ついてませんー、多分ね!ギルにはコーレ!絶対似合うから、ハイドーゾ」
「何だなんだ?オイ、女物にしてはやけにサイズが・・・」
「だーかーらー、お兄さんサイズで作ったって言ってるでしょー」
変態、変態、ド変態。
アントンと二人で野郎サイズの女物の服を飛ばしながら、けらけら笑う。
今の話がホントだとしたら、こいつこんなの着て女とセックスしてんのか。ホントだとしたらっつーか、ホントだろうな。
うーわ、想像したらビール逆流。
ぶふっと手に掴んでいた客室乗務員の制服にぼとぼとビールを吐いたら、フランツはぎゃぁぁぁぁああっ!!と悲鳴を上げて
衣装をオレからぶんどった。
思えば、オレ様も酔ってたんだと思う。ていうか、酔ってた。現在進行形で、悪友三人、楽しい宴はまだまだ続く。
どぉ、どぉ、結構似合わん?ぱんちら一回10ユーロ!
ひらひらひらひら、ひざ上のスカートをひらめかせながら走るアントン。
ちなみにチェックのミニスカートに白いハイソックス、同じくチェックのブレザーをカッターシャツの上から羽織って。
どこから手に入れたんだよ、コレ!げらげら笑うオレ様は、なんと白衣のミニスカナースだ。
銀色の髪にナースキャップをかぶせられ、調子に乗って小道具である聴診器をかけられて、どんだけマニアックなんだと
用意周到なフレンチメイドにげらげら笑う。
おにーさんなんてパンツ丸見せだよ!看護婦さん、お兄さん熱あるみたいなんですぱんつの紐解いてくれますぅ?
最終兵器のウィンクをしてベビードールの裾をつまむフランツ、抱腹絶倒、腹がよじれるとはこのことだ。
アントンもぱんつ丸見せ、(こいつの場合はトランクスそのままだが)四つん這いになってげらげらげらげら、途中大きくむせながら、
フランツの太腿をばっしばっし叩きながらひぃひぃぼとぼと涙を流す。
「おい、お前意外に似合うぞ!少なくともその・・・フ、フッフレンチメイドよりは・・・ッは、は、はははははは!!!」
うぉおおお、超苦しい、ひぃひぃ四つん這いになってばんばんと床を叩けば、散らばったカードがわさわさ動く。
「ギルこそ、案外イケてんで!おるおる、こんな看護婦さん」
「やーよ、こんなでっかくてガラ悪い看護婦さん」
「テメーに言われたかねぇよ、お前ソレで外歩いたら公然猥褻罪で捕まんぞ!」
間違いない!と指差して笑うアントン、右手にはビール。かくいうオレ様もかしゅりと缶のプルタブを開けて、
一気に喉の流し込む。あー。滅茶苦茶美味い。
もうぬるまったくなってるビールだって、もう、何でもいい。味覚がよくわからない。
取り合えず、こんな事酒がなければ、やってられない、ついていけない。
鏡の前でしなを作ってポージングするアントンに続いて、オレ様も負けじと立ち上がって机の上にダン!と片足をのっけてケセセと笑う。
目の前にいるフランツは、見える!見える!と手を叩き、アントンはでかい姿身をがらがら、オレの傍に持ってくる。
姿身の中に映るは、白いナース服に身を包んだ、同じように白い身体のオレ様。銀色の髪に乗る、ナースキャップ。
アルコールのおかげでぐるぐる回る視界の中で、お、と鏡に映った自分を見て、小さく笑う。
「オイ、オレ様ってばマジで結構イケてねぇ?」
ちょっと、なかなか、いいんでないの。少なくともこの三人の中じゃ、結構マジでいけんじゃね?
さっすがオレ様、女装してもかっこいい。
どーよと足を広げれば、フランツはアレ?と声を上げて、オレの脛をさすさす、擦る。
「お前、脛毛ないの?なんで?」
「生えねぇんだよ」
「ちなみにあそこは?」
「聞いて驚け、つるっつるだ」
ヒヒヒ、と耳打ちしたら、男二人はぶはっと噴出してその後ばんばんオレの背中を叩いた。
つるつるかよ!!うそつけ!!
「しっかたねぇだろ、色素と一緒に全部抜けたんだよ!」
「うそつけや!抜けるかあほ!」
「どーせアレでしょ、ルッツに全部剃られてんでしょ」
「へへん、ご想像にお任せシマス」
ケセセと笑って、ホラ見ろ、と黒のボクサーを少しずらす。
つるつるの日焼けしてないデリケートな場所を二人して覗き込んで、その後二人は「マニアック!!」と更にバカ笑いして、突っ伏した。
しゃーねーだろ、オレ様だって好きでつるつるな訳ではない。
昔はもっさりわっさり、金色のが生えてたんだけどなぁ。
あ?生えなくなったのか、ルツに剃られてるのかって?想像に任せるッつってんだろうが、この野郎。
酒には強い、滅多に酔わない。恐らく、ルツも含めてあの家で一番強いのは、オレ様だ。
ただ、こいつら3人といると、話は別。気の置けない悪友達は揃いもそろってバカに強いし、飲む量だって半端じゃない。
何よりも、一緒にいると安心する。酒のまわりも、くそ早い。
恐らく、一緒に飲んでる二人も同じく。
ぐらんぐらんする頭でケセっと笑って、酒臭い息を吐いて、フランツの顔を蹴っ飛ばして、おっし!と声を上げて左手を上げる。
「おい野郎共、出かけんぞ!」
「はい?」
「もぉ夜やけど、つうか深夜?」
「だからいんだろーが、誰が一番男ひっかけられるか勝負しよーぜ」
ケセセセセ!笑って、聴診器をひっかけて、靴のかかとをとんとん鳴らす。
頭はぐらぐら、だいぶ酔ってるんだろう。あーあ、めちゃめちゃ楽しい。だって鏡の中ではオレが白衣の天使だ!
アントンはえええー、と口を尖らせて、ひらひらひらひら、ぎりぎりトランクスが見えるくらいの丈のスカートをひらめかせて首を傾げる。
「そんなん俺が一人勝ちやん。勝負ならへん」
「言ったなコノヤロ」
「そうそう、お兄さんが全部持ってっちゃうよ?」
「「それはない」」
「ひっど!」
どっと起こる、同じタイミングのバカ笑い。
口をとがらすアントンも、「なぁ、ルーソとハイソって、どっちがポイント高いん?」とローファーを鳴らし、やる気まんまん。
フランツに至っては、マジでそのカッコのまま外に出る気なのか、すけすけのベビードールにひもぱんのままバレエシューズに足を乗せる。
おいおい、マジでお前公然猥褻罪で捕まるぞ!笑って言ったら、「お兄さん以前薔薇を股間につけて外歩いた人だよ?」と
実にマニアックな変態ぶりをアピールされた。
「バツゲームは?」
「えー、なんにしよ」
「コレどう、今のカッコのままで公開オナニー」
「あっははははははっははははは!!!あはははははははあははっははは!!!!!!!!」
「ノった!!ひはははは!負けて吼え面かくなよ!」
「いややぁ、負けてもいややけど勝ってもギルかフランのオナニー見なきゃあかんねやろ?どっちになったってバツゲームやん!」
「辞退してもいーぜ、バツゲーム確定」
「ハイハイ、脱いでーお兄さんオカズなろうか?ちくびとお尻、どっちがお好き?」
「ぷくぁっはははは、あははははは!!いやや!めっちゃいやや!!!あははははあはあはははははっ!!」
「イヤなら勝負!おら、行くぞ!!」
「まじで?まじでギル、ちょぉ、めっちゃ面白い!」
酔っ払い三人、図体のでかい男三人、女装したまま泥酔したまま、げらげら笑いながら、玄関の扉を開けようと、意気揚揚に階段を降りる。
ちょうどその時間帯、時はずらして、各国でこんな会話があったのを、オレ達は知らない。
ドイツ:バイエルン
「おや、何をお探しですか。ルートヴィヒ」
「・・・ウーノのカード」
「・・・負けず嫌いですねぇ・・・。カードならギルベルトがフランシスの家に持って行きましたよ」
「ム・・・」
「丁度いい、これ、届け物お願いできますか?ついでにギルベルトを迎えに行って来て下さい」
「・・・・・・・・・・」
「行ってらっしゃい」
フランス:シャルル・ド・ゴール空港
「・・・あれ?アーサーさん?」
「お、マシューじゃねぇか。珍しいな、こんなトコで」
「アーサーさんこそ。フランシスさんの家に?」
「あー。ちょっと料理のレシピをだな・・・・」
「丁度いいですね、一緒に行きませんか?僕も忘れものがあって、フランシスさんの家に」
「おぅ、久々だなー、折角だからちょっと飯食おーぜ。おごるからよ」
「マックはイヤですよ・・・」
「・・・旨いじゃねーかよ・・・」
スペイン:マドリード
「・・・・あのアントーニョのくそやろー、オレの服勝手に着ていきやがった!あの服気に入ってるから着んなって言ってんのに・・・。
 スケ帳・・・なんだ、フランシスのやろーのトコか・・・明日どうしても着たいのに、仕方ねー、取りに行くかちくしょーめ・・・」
各国でこんな会話がされていたのは、オレらが階段を下りている今の時間の、4時間前。
どんな運命のいたずらか、この4人が偶然にもフランツの家の前でばったり出会って、「あれ」と顔を見合せている事を、オレ達はまだ知らない。
ついでに言うと、それぞれの弟+子分たちのスーパーお仕置きタイムがその後に待っていると言う事も。