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今宵夜市が開かれる。
学校蝙蝠はそう言った。
 
 
 
「ルーゥ、イー」
 
チャイムと共にぱたぱた、学校指定の上履きを鳴らして、俺は隣のクラスに鞄を持って走る。
重たい、鉄製の大きな扉。
がらがら開けて、中をきょろきょろ、見回して。でっかい体の金髪を捜す。
俺もそんなに、身長は低いほうではないけれど。
周りよりもひとつ飛出た金色の頭。見つけた、と目で確認して、大きくぶんぶん、手を振った。
 
「・・・あまり大声で呼ばないでくれないか」
「声大きい?」
「大きい」
「そっかなー」
 
こちらの呼びかけに片手を上げて応えて、彼は机の横に掛けてある鞄を持って、席を立つ。
また明日、そう、彼のクラスメイトに声を掛けられながら。無言で手を上げるのは、俺の小さな頃からの幼馴染。
「一緒に帰ろー」。そう言って笑って、こうして迎えに来るのが、最近の俺の日常。
 
「どーしてもわかんないのがあって、あの授業」
「・・・お前、最近分からないものだらけじゃないか」
「こっちの国って、スピード速くない?俺全然ついていけないんだけど」
「お前の住んでいた所が遅いだけだろう」
 
呆れたように呟く彼。とにかく教えてよ、俺、単位落としちゃう。
そう言って笑えば、隣を歩く幼馴染はあまりアテにするなよと後ろに撫で付けた髪を掻き揚げて、鼻から小さく息を吐いて、笑った。
昔っから、変わらない、少し大人びた幼馴染。
態度は結構ぶっきらぼうでも、何だかんだ彼はいつも面倒見がよくて、頼りになる。
 
あんまり見られないけど俺と同じ年の彼、ルートヴィヒは、小さな頃から物の見方が変わってて、色んな人から一目置かれてるような人間だった。
対して、いつもルーイの後ろをくっついてた俺。
俺は昔からあんまり出来がよくなくて、泣き虫で、いつもルーイの影に隠れて、そういえばあの頃からよく面倒見てもらってた。
両親の海外転勤が決まって急遽、挨拶もろくに出来ない状態でこの国から離れて、10年。
大学くらいはこっちで通いたいと我が侭言って緊急帰国。
ただーいまー、と10年ぶりに彼のいる学校に編入したら、ルーイは青い目を大きく開いて驚いてた。
 
いつ帰ってきたんだ。
一昨日~。びっくりさせようと思って。驚いた?
吃驚した・・・。
 
顔つきや身体つきはまぁ実にむきむき男になってはいたけど、小さな頃から寄ってた眉間の皺と、
笑った時に見える八重歯は、全く変わって居なかった。
 
「何処行くー、図書館?俺んちでもいーよ」
「俺の家の方が近いだろう。問題集、持ってきてるか?」
「ハイであります、隊長!ヴェー、ルーイの家行くの久々だなぁ」
「誰が隊長だ、誰が」
 
エロ本一杯あったりして。ひひっと笑って、少し高い位置にある方をとすとす叩く。
そんなわけあるかと言いながら、ぽこんと俺の頭を叩くルートヴィヒ。
笑いながら歩く、帰り道。時刻は夕暮れ、右足、左足、一歩ずつ踏み出すと同じようについてくる黒い影。
学校が終わったの3時半だから、そろそろ4時かな。
まだ9月で日が高いとは言っても、このくらいの時間はそろそろ涼しい。
「もう夏も終わりかな~」、そう笑って隣のルーイを見上げた時に、ぱさぱさ可笑しな動きをしながらくるくる回る、黒い蝙蝠の影が見えた。
 
「・・・こうもり?」
「・・・・・・・・・・・」
 
ぱさ、ぱさ、ぱさ、ぱさ。
小さな身体の倍くらいある、真っ黒な羽根。不恰好に羽をぱたぱたしながら、蝙蝠は俺たちの頭上をくるくる回る。
くる、くる、くる、くる。
何度か廻って、そのまま蝙蝠は東の山へ。今度は羽を伸ばして、風に乗ってぴぅっと一直線に飛んでいく。
そんなに田舎でもない、都会でもないこの町は、山もあれば海もある。
蝙蝠が飛んでいった東の山は、山を越えると下は海で。
あんな潮風のあたる場所に蝙蝠の巣でもあるのかなと、小さくぼやいて、背の高いルーイを見上げた。
 
 
 
 
「うわ~、全然変わって無い、ルーイの家」
「10年ぶりか?」
「だね~」
 
おじゃましまーす、後ろにいるルーイに笑って、指定のローファーをぽこんと脱ぐ。
ほんとに変わってない、飾られてる絵まで昔と同じだ。こっちが階段、こっちがリビング。
で、その奥が、俺がよく遊びに来てた庭にも出れる、でっかいキッチン。
お互い両親が不在がちで、特にルーイの両親は滅多に家に帰ってこなかったから、よく泊まりに来てたっけ。
そう、笑いながら、この絵、俺が描いたやつでしょ~、と大きな白い扉をばたんと開ける。
勝手知ったるなんとやら、好き勝手歩く俺に、後ろのルーイも苦笑してリビングへ。
大きなダイニングテーブルに、家族分の白い椅子。テーブルには彼の両親の母国語の新聞。
読まれる事なく積み重なってるところを見ると、今でもあんまり家に帰っては来ないのかな。
食器棚、グラス、テーブルにあるマグカップ。ひとつ。
 
・・・・・・・・・あれ?
 
なんだかおかしな違和感を感じながら、でもそれが何の違和感なのかが分からずに、勧められるままにソファに腰を下ろす。
ダイニングと同じ、白いソファは部屋に一つ。確か、これ、俺が昔遊びに来た時からあったなぁ。
革張り変えたんだろうか、きれいなままのそれに、ここでも小さく、違和感。
何だろう。頭の中で首を捻って、こぷこぷとエスプレッソマシーンをセットする後姿を見る。
生クリームは?
制服のまま問いかける幼馴染に、いらなーい、と応えて、鞄から早速教えてもらおうと思っていた問題集をばさっと出した。
 
「・・・コレの何がわからないんだ」
「えー・・・全部でありますが、隊長」
「よくこれでうちの学校に編入出来たな・・・」
 
むっつりと眉を寄せるルートヴィヒ、いつもの顔、これがいつもの表情だと安心するのだから、きっと彼は損してる。
方程式を教えて貰って、まずはコレから当てはめてみろとシャーペンを渡されて、はぁいとかちかちシャーペンの上をノックする。
昔から数字には強い奴だったけど、今も理系なのかな。
俺は見た目通りの文系で、小さい頃からよく算数とか、教えて貰ってたなぁ。
算数、・・・あ、算数、そう言えば。
あの時に、大嫌いな数字を教えてくれてたのは、ルーイじゃなかった。
 
「・・・あ。ねぇ、ルーイ」
「・・・なんだ、解けたか」
「問題は解けないんだけど・・・ギルベルトは?」
 
ルーイの持ってるシャーペンの芯が、ぺきん、と折れた。
特に気にも留めず、俺は、そうだよ、と思い出す。
家に入った時から感じた違和感。
ダイニングテーブルにセットされた椅子は3脚。ルーイと、ルーイの両親と。もう一つ、なければおかしいのに。
食器棚に飾られてる飾り皿だって、グラスだって、テーブルの上に乗ってたマグだって。数が足りない、だから、変なんだ。
今俺が座ってるソファも、昔は絶対、二つあった。
俺と兄さんの分だと、ルーイ達はいつも笑って、大きなソファを占領していた筈なのに。
 
ギルベルトは?
 
言葉が響く。
目の前にいるルートヴィヒは、伏せていた目を上げて、青い瞳を丸く、大きく開いて、俺とかちりと目を合わせる。
少しだけ彼の顔が青ざめていて、あ、と少しだけ、嫌な予感がした。
・・・もしかして、何か悪いこと聞いたかな。
彼の家族関係、一体10年の間に何があったかはわからないけど。
ルーイの唇が震える。カップを持つ手も同様に、彼は震える右手を押さえつけるように、静かに、静かに、カップを置く。
かちゃんとソーサーとカップの重なる音が、しんと沈んだ広い家に、やけに大きく響いた気がした。
 
……………やばい。
何か知らないけど、聞いてはいけない事に触れた。
何か、言わなければ、謝る?いや、いやいや、まだそうと決まった訳じゃない、謝るのもおかしいだろう。
あの、そう、こちらから口を開くより前に、姿勢はそのまま、首から下は動かないような状態で、ルーイは搾り出すように、呟いた。
 
「・・・知ってるのか、お前、何で、知ってるんだ。ギルベルトを」
「知ってるのかって・・・ギルベルトでしょ。俺らと3つくらい違う」
「どんな兄だったか、覚えてるか?名前だけじゃない、どんな、彼が、どんな人だったか」
「結構似てたよね。ルーイと」
「写真は?お前、絵とか、描いてないか。何でもいい、彼の持ち物は持ってないか」
 
テーブルに手をついて、でも、その手も小さく震えてる。ゆっくり膝立ちになるルートヴィヒ。
もともと白い顔は、更に白く。
流石に尋常じゃない様子に、俺も思わず目を見張る。
ど、どしたの。
聞いても、彼は「教えてくれ」それしか言わない。
 
「え・・・何、なに?ギルベルトに、何かあったの?」
「何か、持ってないのか、兄さんの物を、何か!」
 
怒鳴るルーイ。
普段激する事の無い彼の大きな声に、ひゃっとこちらも声を上げて、思わず、ゴメン、と謝る。
も、持ってないよ、ごめん。訳も分からずに、頭を下げてしまった。
俺の返答に、幼馴染は小さく消沈して息を吐く。
でっかい手が俺の肩をがしりと掴んでいるのに今ようやく気づいたのか、すまない、と彼も謝って。
それでもう一度ため息をついて、がりがりと、眩しい金髪を掻き混ぜた。
 
「無いんだ」
 
ルーイは続ける。
何が?と、俺。
兄さんの記憶が。
 
「なにそれ」
「彼の物がないんだ。誰も、誰も兄さんを覚えていないし、彼が居たという形跡も、何一つ。記憶も。俺の記憶すら」
 
薄れてきてる。
震えるルーイ。かたかたと、大きな肩がだんだんと。
何の事を言ってるのかが理解出来なくて、もう一度「ギルベルトは何処にいるの?」と聞いたら、彼はゆっくり小さく、首を振った。
思わず、笑う。
・・・彼の事を、覚えて無いって?誰が?みんなって、何を言っているんだろう。
だって、俺は覚えてるもの。10年前の事だけど、忘れるわけなんて、ある訳ない。
ルーイの言ってる意味がよく分からない。もしかして、と、言いたくない言葉を口にした。
 
「・・・死んじゃったの?」
「消えたんだ」
 
存在が、彼の存在自体が。ここに、居たという事実が、何もかも、綺麗に、俺の、記憶以外から。
まさか。
俺は笑う、存在が消える?そんな馬鹿な、人が消える訳が無い。
やはり不幸があったんだろうか、そういう意味なんだろうか。
消えるという、その事は。
ぞわりと背筋が冷えた。そんな、と俺も思った。俺もギルベルトとは仲が良かったから。
震えるルーイの肩に軽く手を置いて、「大丈夫、」と声を出す。
ルーイは俺の手を掴んで、「どうしてお前は兄さんを覚えているんだ」と苦しそうに呟いた。
 
「父も母も、誰も覚えていないんだ。彼の友人でさえ、兄を覚えていない、俺が彼の名前を何度呼んでも不思議そうに頭を捻るだけなんだ」
「・・・そんな事、」
 
・・・悲惨な亡くなり方をしたんだろうか。
思い出したくもないくらい、何か酷い事をしたんだろうか。ギルベルトは。
彼の話は尚も続く。
 
「帰ったら、部屋も無くなっていた。兄の部屋は物置になっていて、俺が彼から貰ったものは全て何処かへ消えて、
 家族の写真は彼の姿だけが消えていた。
 学校の在籍名簿にも、戸籍にも、兄の名前が無いんだ。ギルベルトなんて名前の人間は、最初からもともと居ないかのように、」
「・・・ルーイ?」
「性質の悪い冗談だと、夢だと思って、彼を探した。
 何処にもいないし、誰も彼を覚えてない、そのうち、俺に兄が居たという事、それ自体が俺の夢だとばかり、それで、何年も」
「ルーイ、落ち着いて」
「俺に兄はいたんだろうか、あの、ギルベルトという兄は、俺の夢の中の人だったんじゃないだろうか、そう、ずっとずっと」
「ルーイ」
 
尋常じゃない。俺の手を握って捲し立てる友人の姿は何かに執り憑かれてるように見える。
かたかた震える、大きな手。
まずい。どうしたんだろう、本当に、彼の言ってる事が分からない。
何とか理解しようと、再度彼の名前を呼びかけたら、青い青い瞳から、つぅ、と一筋の涙が流れた。
驚いた。
ルーイの涙なんて、小さい頃から滅多に見た事なんて無かった。
 
「・・・・・・お前は知ってるんだろう?ギルベルトを、俺の兄を、」
「・・・・・・知ってるよ、すごくよく、覚えてるよ」
「俺に、兄は居たか。強気で、負けず嫌いで、俺に良く似た顔をした、ギルベルトという名前の兄は」
「居たよ」
 
そう言ってやれば、彼は青い瞳をぎゅっと閉じて、形のいい眉を寄せて、俺の手を掴んだまま、何も言わずに俯いて、静かに泣いた。
 
・・・・・・・一体、この10年間の間に、彼に何が起こったんだろう。
ルーイに、ギルベルトに。一体、何が。
「消えた」というのはどういう意味だろう。姿が?記憶が?皆して、ルーイに何か隠してるだけじゃないのだろうか。
ルーイが少しおかしくなってるのか、おかしくなるくらいの何かがあったのか。
先ほどの彼の言葉も、気になる。
 
『戸籍にも名前が無いんだ。写真からも彼の姿だけが消えている』
 
・・・何かあって隠すにしても、果たしてそこまでするだろうか。
声無く静かに泣く友人を前に、俺は、あることをふっと思い出す。
小さい頃に仲の良かった3人、俺と、ルーイと、ギルベルト。
両親の海外赴任が決まった時に、二人と離れて外国に行くのが嫌で、離れるのが嫌で、最後に3人で写真を撮った。
親に頼んで3人分現像してもらって、3人で、宝物にしようと同じものを持って。
左にルーイ、真中に俺、右に、ギルベルト。
3人で手を繋いで撮ったから覚えてる。幼い頃よく眺めていたあの写真も、そういえばここ最近は家の写真立にも入れてない。
ぱたぱたと涙を床に落とすルーイに、俺は静かに、「ねぇ、」と声をかける。
 
「俺が、引っ越す前の日くらいにとった写真、3人で写真撮ったの覚えてる?」
「・・・ああ」
「あれ、見せてよ。ギルベルト居るでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 
ずず、とルーイは軽く鼻を啜って、何かを言いたそうに俺を軽く見て、少しだけ喉を上下させて、呼吸を整えて、その後「待ってろ」と踵を返した。
ぱたんと閉じられるリビングの扉。
・・・あの扉も、よく覚えてる。
大きなこの家の中で俺たちはよくかくれんぼとかしてて、だいたいギルベルトが鬼になって、俺たちは笑いながら彼から逃げて、
よくあの扉にぶつかっては泣いていた。
俺とルーイは同じ年だったけど、ルーイは滅多に泣かなかったな。俺は今でもよく泣くけど。
泣く度に、ギルベルトはよく「男の癖に泣くんじゃねー!」と吠えては、ルーイの頭を殴ってたっけ。
昔の事を思い出して、少しだけ笑う。
彼が落ち着いたら、過去に何があったのか、きちんと聞こう。
ルーイが難しかったら、他の、昔の友人にも。
庭に続く大きなガラスの窓を見て、そういえば、ギルベルトって沢山の鳥を飼ってたけど。
あの鳥たちはどうしたんだろう。昔は沢山の鳥小屋が庭にあったけれども、今はそれも何一つない。
確かにこの家にはギルベルトが居たという懐かしさも思い出す物が無い程、彼の匂いを感じない。
 
『消えたんだ』
 
途端に、さっきルーイが言っていた言葉が蘇って、ぞくんと背中に悪寒が走る。
・・・消える訳ない、でも、何でそんな言葉を使うんだろう。
 
『彼の存在が、初めから何もなかったように』
 
ゆっくりと、心拍数が上がる。ピアニッシモから始まるのクレシェンドのように、ゆっくり、ゆっくり。
かたん、と音がした。
吃驚して後ろを振り向けば、瞳を少しだけ赤くしたルーイが、一枚の白い紙を持って、立っていた。
白い紙は写真。後ろ向きになったそれを、静かにこちらに近づいて、無言で俺に右手で差しだす。
 
「ルーイ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「吃驚したぁ、すぐ見つかったの?俺、この写真多分アルバムの奥に仕舞ったままで・・・」
「・・・それは確かに、俺とお前と、兄さんで撮ったものだよな」
「うん、俺、ちょっと泣いてたと思うけど3人一緒に手を繋いで・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 
写真を捲る。
捲った瞬間に、ざぁっと、一気に血の気の下がる音が聞こえた。
心臓は跳ねる、胸から聞こえる音は途端にフォルティシモに変わって、ばくばくと胸を打ち鳴らす。
 
この写真は、絶対に、覚えてる。俺も同じものを持ってる筈だ。
俺は左に居るルーイと、右に居るギルベルトの手を握って、涙をこらえて、精一杯の笑顔で笑って、ルーイは涙を堪えすぎて、逆に怒ってて。
ギルベルト一人だけ、笑顔で歯を見せて笑ってた。
「フェリちゃんとの写真なのに何でこんな顔してんだよ、バーカ」そう言って、ルーイを馬鹿にしてた筈だ。
この写真は3枚しかない。
デジタルの発達してない10年前、ネガは俺の父親が持ってる。複製は出来ない筈だ。なのに。どうして。
 
無言で顔を上げれば、ルーイの絶望した瞳と目が合った。
青い青い目には、先ほど拭った筈の透明な涙。溜まりかねて、再度頬を伝って、床へ落ちる。
 
「ル・・・」
「・・・居ないんだ、兄さんが、何処にも」
 
ぱたぱたと透明な涙は床を濡らして、写真を持つ俺の手も、だんだんとかたかた、震えだす。
8年前に3人で撮った筈の、3人で手を繋いでいる筈の、古い写真。
手を繋いでる筈の右手は、形はそのまま、空を軽く掴んでる。
 
俺の左にはルーイが居て、右には誰も、居なかった。