「こんばんは。いい夜だね」
「・・・金ならねーぞ」
「困ってるんじゃない?」
「出口教えろ」
「あはは、面白い」
 
男は真っ白な髪の毛をしていた。
白髪?でも、少し光っている。肌も同じく、血管が透ける程に白く、瞳の色も変わっている。
にこにこと笑う男は、笑顔なのに何故かとても怖い。
他の屋台に立つお化けの格好をした者よりも、人間らしい格好なのに。
形は全く俺たちと一緒。それでも、全身から発せられる雰囲気は、人ならざる者の空気だった。
身長は結構高い。男は真っ白の服を着ていて、白装束の様で、それが更に怖かった。
 
「買い物をしないと出られないよ」
「俺の金じゃ買えねーもんばっかなんだよ、今まで見た中でも買えそうなのは一つもなかった」
「いくら持ってるの?」
「2000円」
「それじゃ無理だ」
 
男は面白そうに手を叩いて、にこにこと笑った後に奥に引っ込む。
俺は兄の着ている服をぎゅっと掴んで、ここは嫌だと、無言で目で訴えた。
兄も恐らく同じ雰囲気を感じているんだろう、軽く頷いて、俺の手を引いて、男の店から踵を返す。
どきどきしながら兄と一緒に一歩踏み出したら、後ろから笑う声が聞こえた。
白い男の声だ。笑い声。何て怖い笑い方をするんだろう、高くて癪に障る笑い声だ。
そのまま走ってでもその場を去りたがったが、兄は軽く舌打ちして、振り向いて、「何笑ってんだ」と、男に向かって牙を剥いた。
 
「笑ってんのか、オレを。いい度胸してるじゃねぇか、ただの屋台の店主が」
「兄さん」
「黙ってろ」
「君はここを出たいんでしょ?他の人からも聞いてると思うけど、ここでは何かを買わないと出れないんだよ。
 僕らは売る役で、君らは買う役。役割を果たしてもらわないと、いつまでたっても同じ道を周る事になるよ」
 
笑う店主。同じ道、それを聞いて、ああ、やっぱり、と絶望した。
ずっと、何処も曲がらずに一本道できているのだ。同じ道に出る事はありえないが、見かけた事のある店を覚えていたのだ。
どういう仕組みになっているのか、ループしている。この祭りは、永遠に。
どれくらいの規模なのかもわからない。
いよいよもって、本気で夢だと思いたくなる事態になってきた。
 
「他で買う」
「2000円じゃ何も買えないよ」
「何が言いてぇんだよ、目的はなんだ」
「助けてあげようと思って」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ほんとだよ」
 
男は、変わった色の瞳を細めて、にぃ、と笑う。
怖い。人間じゃないみたいだ。
兄の後ろにさっと隠れて見ていたら、男は指を二つ出して、一本ずつ、折り曲げた。
 
「僕らは売る側、君らは買う側。これは、逆になっても構わない。
 君らに何か売るものがあれば、それを売っても取引は成立する。言ってる意味分かる?出られるよ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 
兄の警戒は解けない。威嚇する犬のように、じっと赤い瞳の男を見て、無言で俺の手を握る。
 
「僕ね、欲しいものがあって。ちょうど、君が持ってたんだよね。
 どうかな、僕に売ってくれない?それで出来たお金で、何かを買えばいい。そうしたら出られる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 
目が合う。
微笑まれたが、全身にぶわっと鳥肌が立ったので、慌てて目を反らして、兄の履いてるデニムをぎゅっと握る。
何を話しているのかは、よく分からない。
でも、兄さんがきっと何とかしてくれる。そう思って、俺は男と目を合わせない様に、下を向いていた。
 
「何だよ、欲しいものって」
「君の弟」
 
男は笑い、兄の身体は強張った。
会話は聞こえない。兄の様子が変わった事に、俺は少しだけうろたえる。
俺の手をぎゅっと握って、顔を上げて見てみれば、彼は金色の眉を吊り上げて、額に青筋を浮かべていた。
怒ってる時の兄の顔だ。
兄は、心底不快そうに目を細めて、その後軽く舌打ちして、俺に「行くぞ」と声をかけて、手を引いた。
 
「あれ?あれあれ、行っちゃうの」
「二度とツラ見せんな、ド変態。ルツ、顔合わせるな」
「君たち売るもの他にないでしょう。君たちと取引が出来るのは僕だけだよ」
「うるせぇ」
「夜市が怒るよ。夜市は客でも無い、ただの冷やかしを一番嫌う」
「行くぞ、ルツ、歩けるか?」
「出られなくなるよ。君達もうここに来てから何時間?そろそろ、君も君の弟も、ここから出られなくなって、夜市の一部にされる」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうかな」
 
出られなくなる。
男のその声が耳に入って、足が竦んだ。兄の手を握ってる手が、冷たくなる。出れない?怖い。
静かに、楽しそうに笑う男に、一度足を止めた兄は、ゆっくりと俺の手を解いた。
兄さん?
見上げたと同時に兄は顔を歪めて、大きく舌打ちして、地面を蹴って、白い男の胸倉を掴む。
ほんの少しの時間の出来ごとだった。
白髪の、白い肌をした男は、まだ子供の兄の、小さな手で胸倉を掴まれながら、それでもにこにこ笑っている。
 
「その口黙らせろ」
「僕なりの助言のつもりだったんだけど、気に障った?」
「弟を不安にさせるような事言うんじゃねぇ」
「本当の事だよ。ここでは嘘をつく事は許されてない。
 いいかな、二度言うけれども君たちがここで取引出来るのは僕だけだ。君たちの持っているものはその身体だけであとは何の価値もない。
 身体と取引が出来るのは人買いである僕しか出来ない」
「人買い?」
「人身売買が専門なんだ」
 
兄の傍へ行って、震える足を叱咤しながら、二人のやりとりに耳を澄ます。
店の店主に子供が食ってかかっているのに、お面をかけた通行人は特に囃したてもせず、騒ぎたてもせず、
それぞれ何か会話をしながら祭りの中を静かに歩く。
地に足がついていないみたいだ。なんて、不気味な光景だろう。
気になる事が多すぎてあちこちに意識を飛ばして集中でせずにいたら、眉を潜めて、男の胸を解放した兄が見えた。
 
「本当は禁止されてるんだけど、僕だけ特別にね。
 ここから出るには何か『買い物』をしなければならない。君たちには買い物をする為のお金が無い。
 選択肢は二つ。君が弟を売ってくれるなら、君は『買い物』が出来るお金が入る。
 断るのならば、このままずっとずっとさ迷って、この祭りの一部として取り込まれて、永遠にずっと、この中だよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「選んでいいよ。さぁ、どうぞ」
 
笑う、笑う、白い男。
白銀の髪に透ける様な白い肌、体温の感じられない身体、声。
死体が喋っているようだと思った。気持ちが悪い。
兄は俺の冷たくなっている手を握って、何かを少し考えているようだった。
兄さんは頭がとても良くて、彼の言った事で間違っている事は今まで無かった。
きっと、今も、何か良い方法を考えているに違いない。出られない、さっきこの男が言った事は嘘だ、兄さんがいい方法を考えてくれている。
兄さん。だんだんと冷えて行く兄の手を握り返して、呼びかけようとした時に「ルツ」と俺の名前を呼ぶ兄さんの声が被った。
 
「兄さん」
「怖くないか?」
「大丈夫」
「お前は強いもんな」
「兄さんの弟だから、大丈夫だ」
 
兄さんが居れば、怖いものなんて何もない。
握られた手をもう一度ぎゅっと握って、俺とお揃いの青い目を見て、そう言った。
「そっか」と兄は笑って、男の方に向き直る。
兄の手は冷たい。俺の冷たい手の体温が移ってしまったのだろうか。
どん、どん、ぴいひゃらと遠くで太鼓と笛の音が聞こえる。耳に馴染んでしまったこの音色はしばらく家に帰っても離れないに違いない。
オレンジ色の提燈、隣の店では射的のようなもので子供たちが遊んでいる。動物の面を被った子供たち。
白い白い店の店主は、相変わらずにこにこと薄気味の悪い笑みを浮かべて、もう一度、兄に問いかけた。
 
「どうする?」
「嘘は無いか」
「誓って」
「祭りの外に出られるという証拠は?」
「無いよ。信じてくれないのならば仕方ない。ただ、夜市は君たちを見てる。客ではないと、疑い出している」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕は、君たちを助けたい訳じゃなくて、商売がしたいだけだから、本当にどちらでもいいよ」
 
笑う男に、兄の奥歯を噛む音が聞こえた。
 
重ねて言うが、会話の内容はわからなかった。言葉ではなく、理解する力が欠けていた。
冷静にと努めていたが、恐らく混乱していたんだと思う。
改めて、この兄の冷静さには恐れ入る。彼はいつでも、頭がきれた。
俺は兄の後ろで、ただ、彼の言う事を聞いていればいい。本当に、そう思っていた。
兄さんが決めてくれる。兄さんの言う事に従えば、そうしたら、きっと二人で家に帰れる。
兄は、俺の手を握り直して、男に言った。
 
「わかった」
「本当に?」
「嘘だったら、殺してやる」
「その前に夜市に殺されるよ」
 
男が声を上げて笑ったのが見えた。
楽しくて、仕方が無いという感じだ。
高い高い、幼稚園児の子供がはしゃぐ時の様な笑い声に、俺はぞっとして身を硬める。
兄さんは俺の方に向き直り、「ルツ」と、いつもの様に名前を呼んで、俺と瞳を合わせる様にしゃがみ込んだ。
 
「ルツ。お前は強い男だ、少しの間だけ待っててくれ。絶対に、ひとりぼっちにはしないから」
「兄さん?」
「このままじゃ、この祭りの中から出られないんだ。あの男の取引に、俺は応じなきゃならない」
「兄さん」
「二人とも、この中に閉じ込められる。一人でも出て、対策を打った方がいい」
「兄さん、何を言ってるのかわからない、取引って、何?」
「ここでは何かを『買い物』をしなければならないんだ、でも、オレたちにはその金がない、その取引だ」
「わからないよ」
「オレを信じろ、いいか。何があっても、お前は頷くだけでいい」
「・・・・・・・・・・・・」
「わかったか?」
 
信じろ、そんな事、言われなくたって俺は兄さんを信じてる。
兄さんの判断で間違った事なんて、今まで一度もなかったんだから、大丈夫だ。
兄の言ってる事は、正直に言って、わからなかった。
それでも、兄さんがそう言うのならば、きっと俺は、頷くだけでいい。
両肩を掴んで、目線を下げてそう言う兄に「わかった」と俺も頷いて、肩に置かれた兄の手を軽く握った。
橙色の光が兄の金髪に反射して、きらきらと光る。
少しだけ眉を寄せて笑った兄は、俺の前髪を掻きわけて、眠る時にするような、軽いキスをしてくれた。
 
「いいぜ、応じてやる。『買い物』をしたらここから出られるんだな、嘘は無いな」
「無いよ。嬉しいな、ちょうど金髪に碧眼の男の子が欲しかったんだよね。高く売れるから」
 
男の目が俺の青い目に合わされて、三日月型に歪む。背筋がぞわっと凍った。
兄さん、兄を見上げても、彼は男に歪んだ瞳を向けていて、俺とは目を合わせてはくれない。少し寂しくなって、下を向いた。
男と兄の会話は続く。
 
「条件がある」
「何かな?」
「こいつは売らない、オレを買え」
「へぇ」
 
買え?
聞こえる単語に吃驚して、下に下ろした視線を兄に向けた。
兄の青い瞳は白い男の、不思議な瞳に向けられてる。ぼんやり光る提燈の色に反射する大きな瞳。
ぎゅっと、俺の手を握る手の力が強くなった。
 
「金髪碧眼だろ、オレでもいいだろ。そんなに歳は変わらねぇ」
「・・・うーん、僕はそっちの子の方が好きなんだけど」
「こいつを売るくらいなら、さっさとこの夜市とやらに取り込まれて、二人で消えてやる。でも、こいつを外に出す方法があるなら」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「決めろ。絶対に、こいつは売らない」
 
ぎゅうぅ、と強く、強く、手を握りしめられる。少し痛い。
眉を顰めたけど、離して欲しいとは思わなかった。
俺は頷くだけでいい、そうすれば、全てが上手くいく。
兄の言った言葉と、兄の背筋の伸びた姿勢に何だかとても心強くなって、俺も一緒になって、少し眉を寄せた白い男の方に顔を向けた。
ちらり、と俺を見た後に、兄の身体を下から上へと、ゆっくりと眺める男。
履いている、泥に汚れたスニーカー、母親からのお小遣いを一生懸命貯めて買った、有名ブランドのデニム、俺とお揃いの色違いのTシャツ。
橙の色に反射する金色の髪の毛、同じ色の眉に、俺よりも少しだけ色の濃い青い瞳。
店の中から出て来て、一通り兄の姿を眺めた男は、少しだけ溜息をついて、「わかったよ」と笑った。
 
「この商売は、年齢が何よりも大切なんだ。悪いんだけど、君の方が歳を取ってる分弟くんよりも買い取る金額は少なくなるけど、いいかな?」
「畜生な商売しておいて、言ってくれんじゃねーか。いいぜ、こいつが『買い物』できる金額さえあればいいんだ」
「あと、売り物は『商品』だから、君の弟がこの取引に応じてくれないと、君は商品になれない」
「ルツ」
「兄さん?」
 
俺の方を振り向いて、目を合わすギルベルト。
笑って、俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。
 
「さっき言った事だ、いいか、何を聞かれても、肯定しろ。お前は頷くだけでいい」
「兄さん、説明してくれ、俺はわからない、何の取引なの、きちんと理解するから」
「信じろって言っただろ、大丈夫だ」
「兄さん、怖いよ」
「泣くな、大丈夫だから」
 
足が震えた。
大丈夫だ、兄に言われた事を反芻して、ゆっくり頷く。
いい子だと言われて、何故だかますます足の震えは強くなった。
いつも兄に褒められれば、嬉しくて顔は自然に笑うのに。
兄の手が小さく震えてる。気づいていたけど、俺はそれを言わなかった。
白い男は「前へ」と、俺を店の前に案内する。
飾り気の無い店、真っ白な店構えの奥には頑丈そうな、白い鍵盤素材で出来た扉があって、大きな鍵が掛けてある。
男は店の前に立った俺の下から上までじっと見て、その後に、今度は人好きする様な、無邪気な笑みを俺に向けた。
 
「名前は?」
「ルートヴィヒ」
「いい名前だね。君はこれから僕と商売をするんだけど、いいかな?」
 
男は話す。
俺は頷く。
何を言われても、頷け。そう、兄は言っていた。
 
「君のお兄さんを、僕が買う事になったんだ。金額はこれ。すぐに、君の住んでる所の現金で払えるよ。ここまで大丈夫?」
 
兄さんを買う?
まさか。兄の顔を見る。兄は眉を寄せて、頷け、とジェスチャーで俺に顎をしゃくる。
何を聞かれても肯定しろ、言葉通りに、小さく、震えながら、頷いた。
男は笑った。素直でいい子だね。頭を撫でられて、その後、兄の手が、ぱぁん!と男の手を振り払った。
 
「ルツに触んな」
「ああ、ごめんね。じゃぁ、続きを。
 契約書は必要ないんだ。ここでの取引は夜市が証人になる。
 ルートヴィヒ、君は、君の意志で君の兄、ギルベルトを僕に売る。この言葉に嘘は無い?」
 
体中の血が下がる。何だって?
俺が、兄さんを売る?どうして、そんな話になっているんだ。
立っている足が崩れそうになって、目の前にいる白い男の顔が二つに見える。
3つ、4つ、ああ、この感覚、きっと貧血だ。昔に学校で倒れた友人の体験談を聞いた時に、こんな症状だと言っていた。
倒れる訳にはいかない、だって、兄さんが。
兄さん。
恐らく真っ白になっているんだろう、血のまわらない顔で兄の方を向いても、彼の指示はさっきと同じ。
頷け、肯定しろ。
オレを信じろ。
嫌だ、頷いてはいけない、だって、俺が兄さんを売ると、そう、この男は言ってるんだ。俺はわからない、兄さん、どうすれば。
 
「オレを信じろって、言ってんだろ。ルツ。オレがお前を騙した事があるか?」
「だって、だって兄さん」
「泣くな、怖い事なんてない。オレが何とかしてやるから」
「一人にしないで」
「大丈夫だ」
 
頬を撫でられて、顔を寄せられて、もう一度額にキスを落とされる。頬、髪の毛、もう一度額。
笑って、言い聞かせるように俺に「大丈夫だから」と再度言う兄。
窘めるように握ってくれる掌は冷たい。少し震えてるけど、握る力は強い。
「お前は、オレの弟だろ」お前は強い、さあ。
言われて、顔を、店の店主に向けられる。
死人のような、体温を感じない、祭りの住人。
涙でぼんやりと視界の曇る中、兄に背中を押されるように、俺は男に向かって、背筋を伸ばして、頷いた。
 
男は笑う。
笑って、兄の手を掴んで、何か、判子のようなものを剥き出しの二の腕に押し付けた。
薄い煙が上がって、兄の身体が冷たくなる。
足元からドライアイスのような蒸気が噴き上がって、下半身、上半身、腕、氷のように冷たくなっていく。
吃驚して、涙の乗った瞳を丸くしたら、瞬間的に繋いでいた手が焼けるように熱くなって、それと同時に兄は俺の手を振り払った。
ドライアイスを触ったような、激しい痛みだった。
兄さん!
彼の吐く息が白くなる。触れようとすれば先ほど彼に触れていた手の痛みを思い出して、身体が委縮して、動かなくなる。
兄は、凍った自分の身体を見て少し笑って、その後に、俺に優しく笑った。
 
「父さんと母さんに、宜しくな」
 
兄さん!!
 
駆けだした俺の頭を、冷えた、大人の男の腕が掴んで、上を向かせる。
白い白い、店の店主は、氷のように冷たい笑顔で、さも楽しいとでも言うように、子供のような声を上げて、俺に笑った。
 
 
「契約完了。ルートヴィヒ、いい取引を有難う」
 
 
ギルベルト!!
 
叫んだ俺の声は、彼には届いたんだろうか。
薄暗い提燈のつく祭りの中で、遠くで聞こえていたお囃子の音が、やけに耳に煩く響いた。
どんどん、ひゃらり。
声は音に消されて、そのうちに、彼の姿も、夜の闇に消えて行った。